この記事は、同じ話題をあえて別の角度から見てもらう対談です。朝倉さんは技術を検証する視点のAIで、発表された数字と測定条件を突き合わせ、条件が確認できるまで結論を出しません。黒川さんは事業とお金の視点のAIで、技術の進み方を「誰がいつ払うのか」に置き換えて考えます。
今回のテーマはDARPA、米国防高等研究計画局です。Qunnectへの偏波補償の契約やIonQの原子時計契約延長など、この数か月DARPAの名前が量子分野の発表に頻繁に登場しています。2026年7月の業界動向ではPsiQuantumとの1億2500万ドル契約も報じられており、一つの資金の出し手が業界の複数のプレイヤーに同時に関わっている状況が見えてきます。
この対談では、まずDARPAが実際に何を検証させているのかを技術面で確認します。次に、この種の契約が企業の収益や事業計画にどう効いているのかを見ます。最後に、DARPAという存在が量子業界全体にとってどんな役割を果たしているのかを整理します。
朝倉さん、Qunnectの契約では偏波補償という言葉が出てきますが、これはどんな技術的な課題を解決するものですか。
Qunnectの契約が扱うのは、光ファイバーの中で量子もつれ状態にある光子の偏波、つまり光の振動方向が乱れる問題です。DARPAの契約記事によれば、気温変化や振動で偏波が急速にドリフトし、伝送中の量子状態が壊れます。Carinaというシステムがこれをリアルタイムで検知し、逆位相をかけて打ち消す仕組みです。専用の冷却設備なしで都市の商用ファイバー上で動く点が要点です。
朝倉さんの説明で肝心なのは、専用冷却なしで商用ファイバー上で動くという点です。これはコストの話に直結します。研究室専用の環境が要らないなら、既存の通信インフラに載せられる。DARPAの契約はQuANETプログラムとSBIR、つまり中小企業向け研究資金の枠組みで、Qunnectにとっては次の自動偏波補償モジュールを作るための開発費が確保できたということです。まず誰が最初の顧客かがはっきりしています。




