8月22日のクオンタムビュー、始まります。この24時間に入ったニュースは全部で3本です。まずは3本をさっと一覧でご紹介し、そのあと気になったものを久保田さんと詳しく見ていきます。
1本目は、Quantum X Labs、NVIDIA CUDA-Q を用いて Google 量子ハードウェアのサーフェスコードデータセットで PyMatching ベンチマークを上回る性能を達成です。AI駆動型の誤り訂正デコーダーが、Googleの公開データセットで標準的な手法より高い精度を出したという発表です。
2本目は、AIコーディングアシスタントは賢くなり続けているです。量子プログラミングをAIが支援する動きが加速していて、Googleが示した暗号解読アルゴリズムをAIがさらに最適化する競争や、PasqalとQuantonationによるAIエージェントの研究発表が紹介されています。
3本目は、Crypto4A、量子耐性HSMモジュールで世界初のFIPS 140-3 Level 3認証を取得です。カナダのCrypto4Aが、量子に強い暗号を扱う機器で世界初となる認証を取得したという発表です。
それでは、この3本を順番に詳しく見ていきます。まずは1本目、Quantum X Labsの発表からです。
Quantum X Labsが、AI駆動型の量子誤り訂正デコーダーの新たな性能結果を発表しました。2026年8月21日付の発表です。Googleが公開しているサーフェスコードの実験データセットに対してテストしたところ、相関マッチングやPyMatchingという標準的な手法よりも、誤りを見つけて修正する精度が高かったということです。
久保田さん、このデコーダーは実機のデータを一切使わずに学習したということですが、それでも実験データでうまくいったというのは、具体的にどういう意味を持つのでしょうか。
一言でいうと、実物のノイズを見せずに育てたAIが、実物のノイズに対応できたということです。量子コンピュータは計算中にエラーが起きやすく、そのエラーを見つけて直す仕組みを誤り訂正デコーダーと呼びます。今回は、シミュレーションだけで学習したモデルが、Googleの実機データでPyMatchingという標準手法を上回りました。学習データを実機ごとに集め直さずに済む可能性があるという点で、コストの下がり方が変わります。ただしこれは1種類のコード構成での結果です。処理の速さ、つまり大規模な計算に間に合う遅延で動くかはまだ示されていません。異なるハードウェアでも同じ精度が出るかが次の焦点です。
久保田さんが仰った「遅延」というのは、計算の途中でエラー修正の判断にかかる待ち時間のことですね。つまり、精度は実機でも確認できたけれど、実際の大規模計算に間に合う速さで動くかどうかは、まだこれからの検証だということですね。
続いて2本目、AIコーディングアシスタントは賢くなり続けているです。2026年8月20日付の記事です。
Googleが示したビットコインの暗号解読アルゴリズムを、AIを使う複数の研究チームが競って効率化しています。
効率の良さを測る指標はspacetimeスコアと呼ばれます。使うゲートの数と量子ビットの数を掛け合わせたもので、値が小さいほど優れているとされます。
Googleが最初に示したスコアは約29億でした。4か月後には、その半分ほどの約14億7700万まで下がっています。
久保田さん、AIがここまで最適化を進められるようになったことは、暗号解読の話に限らず、量子プログラミング全体にとってどんな意味を持つのでしょうか。
一言でいうと、量子プログラムを書く作業そのものを、AIが人に代わって最適化する時代に入ったということです。今回変わったのは、暗号解読という難しい設計作業で、AIがゲート数を減らす具体的な改善を人より速く積み重ねられると示された点です。doubleAIの結果はゲート数がさらに少ないものの、検証可能な形では公開されていないため、リーダーボードでの比較はまだできません。次に問われるのは、こうしたAI最適化が暗号解読以外の実用計算にも同じ速さで広がるかどうかです。先ほどのQuantum X Labsの件と合わせると、学習と最適化の両方でAIが土台を支える構図が見えてきます。
久保田さんが仰った「検証可能な形」というのは、他の人が中身を確かめられる状態で公開されているかどうか、ということですね。つまり、doubleAIの結果は数字だけ見ると優れているものの、第三者が確認できないため今の時点では並べて比較できない、ということですね。
最後は3本目、Crypto4A、量子耐性HSMモジュールで世界初のFIPS 140-3 Level 3認証を取得です。2026年8月20日付の発表です。カナダのCrypto4Aが、暗号鍵を守る機器QASMで、量子に強い暗号方式に対応したFIPS 140-3 Level 3という認証を、この種の機器として世界で初めて取得しました。
久保田さん、このFIPS 140-3 Level 3という認証は、具体的にどんな水準をクリアしたことを意味するのでしょうか。
一言でいうと、量子に強い暗号を扱う機器が、政府や金融機関が求める本人確認と物理的な安全性の基準を、第三者機関から公式に認められたということです。FIPS 140-3 Level 3は、鍵を扱う担当者の認証や、機器がこじ開けられたときに中身を自動的に消す仕組みなどを実際に検証して初めて通ります。QASMはML-KEMやML-DSAといったNIST標準のポスト量子暗号にネイティブ対応していることも確認されました。まだ示されていないのは、DigiCertのプラットフォームに実際に組み込んだ運用でどれだけ移行がスムーズに進むかです。導入事例が出てくれば、他の政府調達にも広がるかどうかが見えてきます。
久保田さんが仰った「ネイティブに対応している」というのは、後から付け足しではなく、機器そのものの仕組みとして最初から新しい暗号方式を扱えるということですね。つまり、QASMは認証の基準を満たしただけでなく、実際にDigiCertの仕組みに組み込んで使えるかどうかがこれからの確認点だということですね。
今日の3本は、無理に一本の線でつなげるより、別々の動きとして見た方が正確だと思います。デコーダーの精度検証とAIによる最適化競争は、AIが計算の土台を支える流れとして重なりますが、Crypto4Aの認証取得は、暗号を守る側の基準づくりの話で、方向が異なります。次に見るべきは、Quantum X LabsのデコーダーやAI最適化の結果が、別のハードウェアや別の計算でも同じ精度で再現されるかどうかです。
AIが計算の土台を支える動きと、暗号を守る基準づくりの動き、その両方の続報を、明日の夜もこの時間にお伝えします。




