ここまでの2回で、モデルの作りと、動かす場所の変化を見てきました。最後の回は技術から離れます。いくらで使えて、誰の数字を信じるかという話です。
価格が桁で動いた
2026年8月に公表された価格を並べます。いずれも100万トークンあたりです。
| モデル | 入力 | 出力 |
|---|---|---|
| GLM-5.3-Flash | 0.15ドル | 0.50ドル |
| Qwen3.8-Flash(製品版) | 0.16ドル | 0.47ドル |
数十セントの世界です。GLM-5.3-FlashについてArtificial Analysisは、上位版GLM-5.3の価格の1割強だとしています。
Googleがgemini-3.7-flashを一般提供した件でも、導入価格が2026年末までという期限付きで示されていました。価格そのものが競争の手段になっています。
「1タスクいくら」で比べる
価格の比べ方も変わりました。
Artificial AnalysisがGLM-5.3-Flashを評価した結果では、Intelligence Indexで57点、その評価を1回まわす費用(Cost per Task)が0.09ドルとされています。上位版のGLM-5.3は60点で0.68ドル。3点差を約7.5分の1の費用でという構図です。
同じ57点でも、GPT-5.6 Terraは0.51ドル、Muse Spark 1.2は0.40ドル。点数だけでは並べ替えられません。
これは当サイトが性能の比べ方を扱った回で述べたことと同じ構図です。忠実度だけで並べた順位と、費用まで入れた順位は変わりうる。分野は違っても、同じ問題が起きています。
測る側が出てきた
もう一つの変化は、誰が数字を出すかです。
この8月に当サイトが扱った発表を振り返ると、Apple、NVIDIA、Qwenのいずれも、示された数値はその会社自身の公表値でした。第三者の実測ではありません。記事のたびにその但し書きを添えてきました。
GLM-5.3-Flashの評価はそこが違います。Artificial Analysisはモデルを作っていない側です。しかも良い面と悪い面の両方を書いています。実務のエージェント作業ではGLM-5.3と誤差の範囲で並ぶ一方、実世界の知識を測るAA-Omniscienceでは正答率28%で、GLM-5.3の34%、GPT-5.6 Terraの47%を下回るとしています。
作る側の主張と、測る側の数字。両方が並ぶ状態になってきました。
ライセンスは揃っていない
重みの公開が当たり前になった一方で、条件は揃っていません。
Ornith-1.5はMITライセンス、DeepSeekのエージェントハーネスdshもMIT、GLM-5.3-FlashもMITです。いっぽうQwen3.8-Flash-Nextは、Hugging Faceの表示が other としか出ません。
「オープンウェイト」という言葉では、実際に何ができるかは分かりません。使う前にライセンスを見る必要が残っています。
お金の出どころが変わった
最後に、資本の動きです。
Stability AIのシリーズBには、Electronic Artsと大手音楽3社(Sony Music Group、Universal Music Group、Warner Music Group)が新たに入りました。権利者の側が出資に回った形です。同社はこの発表の直前に、ライセンス済みのデータで学習したという音楽モデル群を公開しています。
規模の面では、SpaceXによるCursorの600億ドルでの買収が突出しています。AnthropicとOpenAIが自ら公表した調達額と計算資源も、ギガワット単位の話になっていました。
この3回のまとめ
技術面では、総パラメータより活性パラメータ、そして動かす場所が両端に伸びたこと。事業面では、価格が桁で下がり、測る側が現れ、権利者が出資に回ったこと。
数字が出てきたときに見るべきものは、この8月でかなり変わりました。総パラメータ、点数だけの比較、そして自社の公表値。この3つは、いずれも単独では材料になりません。
オープンモデル乱立とエージェント特化競争で扱った8月後半の動きも、この流れの中にあります。




