前の2回は技術の話でした。最後は、お金がどこへ向かっているかです。
買われているのは工場
この数か月の買収に共通しているのは、製造能力が対象だという点です。
IonQによるSkyWater Technologyの買収が完了しました。SkyWaterは米国最大の国内半導体製造企業とされていて、IonQはこれで設計から製造、実装まで一貫した体制になったと説明しています。
Quantum Computing Inc.も同じ方向で、NHanced Semiconductorsを7,310万ドルで買収し、Fab 2の立ち上げを加速させています。
アルゴリズムでも人材でもなく、工場です。
決算に出ている開き
その買い物の裏側が、決算に出ています。
Quantinuumは17億ドルのIPO完了後の初決算で、売上高が前年比279%増の800万ドル。いっぽう純損失は5億9,652万ドルです。売上800万に対して損失6億。
Quantum Computing Inc.の第2四半期は収益555万ドルで前年同期比約90倍。ただし元が小さいので倍率は当てになりません。
いまは売上で回している事業ではないということです。資金は市場から調達し、それで工場と人を買っている。収益より先に、供給網の位置を押さえにいっている構図です。
建てる道もある
買うだけが道ではありません。QpiAIはベンガルールに8インチの量子チップファウンドリを自前で建てました。いまは最大128量子ビット、2027年までに単一QPUで最大10,000量子ビットが目標です。
インド政府のNational Quantum Missionなどから3,200万ドルを得ています。政府の資金が入っている点は、買収案件との違いです。
まだ確かめられていないこと
対談で指摘した点を繰り返します。買った工場が本当に量子プロセッサを量産できるのかは、まだ示されていません。
SkyWaterもNHancedも、もともと量子のために作られた設備ではありません。買収が完了したことと、そこで量子ビットが歩留まりよく作れることは別の話です。買収後の歩留まりや量産数の数字は出ていません。
この3回のまとめ
誤り訂正のデコーダが主戦場になり、古典側からの検証が厳しくなり、工場が買われている。
技術の話と、それを作る設備の話と、そのお金の話。この3つが同時に動いているのが2026年の夏でした。半導体側から見た同じ動きは半導体トレンドの回でも扱っています。
次に見るとすれば、買収した工場から実際に何量子ビットが出てくるか。そこが出るまで、この買い物の評価は保留になりそうです。



