PrismMLが2026年9月17日、Ternary Bonsai 2 27B を公開しました。Qwen3.8 27B を三値(-1・0・+1)に圧縮したモデルで、5.9GB、ライセンスは Apache 2.0 です。同社は「元のモデルの 98.2% の性能を保ったまま 9倍以上 小さくした」としています。
公表されている数字
| 元にしたモデル | Qwen3.8 27B |
| パラメータ数 | 27.8B |
| 大きさ | 5.9GB |
| 総合点 | 83.9(元は85.4) |
| 保持率 | 98.2% |
| 測ったもの | 20種の試験(推論・数学・コーディング・指示の追従・視覚・道具の使用) |
| 速さ | RTX 5090 で最大 143トークン/秒 |
| 学習に使った機械 | Google v5 TPU |
| ライセンス | Apache 2.0 |
大きさは筋が通っています。27.8BをFP16で持てば55.6GB、5.9GBなら9.4倍の圧縮で、公表の「9倍以上」と合います。1つの重みあたり1.70ビットで、三値の理論下限である1.58ビット(log₂3)をわずかに上回ります。⭐ 差は、まとまりごとに持つFP16の倍率のぶんと読めます。
⭐ 発表文には無い、能力ごとの数字
同社の発表文は総合点しか書いていませんが、告知に添えられた図には能力ごとの内訳が載っています。読み取って検算した値が以下です。
| 能力 | Qwen3.6 27B | Qwen3.8 27B | Bonsai 2 27B | 保持率 |
|---|---|---|---|---|
| 知識・推論 | 84.71 | 86.66 | 83.95 | 96.9% |
| 数学 | 94.64 | 97.06 | 96.57 | 99.5% |
| コーディング | 82.57 | 82.17 | 81.58 | 99.3% |
| エージェント・道具の使用 | 80.05 | 79.74 | 77.57 | 97.3% |
| 指示の追従 | 74.53 | 81.25 | 82.66 | 102% |
| 視覚 | 79.82 | 81.64 | 78.59 | 96.3% |
| 全体 | 83.6 | 85.4 | 83.9 | 98.2% |
⚠️ 「98.2%」は平均であって、一様ではありません。数学は99.5%まで保たれる一方、視覚は96.3%、エージェント用途は97.3%まで落ちます。⭐ どの用途に使うかで、圧縮の代償は変わります。
⭐ 読みどころ:圧縮した新型が、圧縮していない前の世代と並んだ
この表でいちばん目を引くのは、Bonsai 2(83.9)が、1つ前の世代である Qwen3.6 27B(83.6)をわずかに上回っていることです。差は +0.3。
⭐ つまり 「1世代前のモデルを、9分の1の大きさで持てるようになった」と読めます。5.9GBなら、手元の機械のメモリに載ります。圧縮の値打ちは、元のモデルに何%迫ったかより、この比較のほうが実感に近いと思います。
一方、最新の Qwen3.8(85.4)との差は -1.5 です。
⚠ 指示の追従が「102%」になっている件
表では、指示の追従だけ圧縮した側が元を上回っています(82.66 対 81.25)。
⛔ 圧縮で能力が増えることはありません。この種の数字は、試験の測り方のばらつきと読むのが妥当です。⚠ 裏を返せば、この20種の試験には1〜2ポイント程度の揺れがあるということで、総合点の「98.2%」も、その揺れの上に乗った数字だと考えておくべきです。
⛔ 確かめられなかったこと
- 前の版(Bonsai 1)からどれだけ良くなったのか。告知は「2か月前の初版からの最大の変化は品質」「エージェント的なコーディング、多モーダル推論、長い手順の道具使用で特に大きく改善した」としていますが、⚠️ 図にも発表文にも Bonsai 1 の数字がありません。つまり発表の中心にある主張が、公開された材料では検算できません
- 三値化の中身。重みが -1・0・+1 のどれを取るか、どの基底で、倍率をどの単位で持つのか——発表文にも詳細がありません
- 20種の試験の内訳。どの試験を使ったのかは示されていません
- 第三者による検証。見つけられませんでした。当サイトも動かしていません
- 他社の圧縮モデルとの比較。同じ条件で測った数字が無いため、本記事では並べません
どう見るか
「手元で動く大きさに、1世代前の実力を収めた」というのが、いちばん正確な言い方だと思います。5.9GBという数字は、16GBのメモリを積んだ普通の機械で扱える範囲です。Apache 2.0 で誰でも試せるので、⭐ 気になる用途があるなら、自分で測るのがいちばん早いのも確かです。
⚠️ ただし、保持率は用途によって96%台まで落ちます。視覚やエージェント用途を主に使うのであれば、総合点の98.2%をそのまま当てにはできません。そして、この発表の売りである「初版からの改善」は、いまの公開材料では確かめられません。
告知はPrismMLの投稿、発表文は同社のニュースページにあります。能力ごとの数字は告知に添えられた図から当サイトが読み取り、保持率を再計算して一致を確認しました(2026年9月18日)。




