9月20日、クオンタムビューの時間です。今日は量子コンピュータ関連のニュースが全部で6本入ってきました。まずはすべてを簡単にご紹介して、そのあと気になったものを詳しく見ていきます。
ではまず、今日入ってきた6本をまとめてご紹介します。量子コンピュータの誤りを抑える技術や、企業の資金調達、研究の成果と、幅広い動きがありました。
まず、IBM Researchの動きから2本です。1つ目、IBM Researchは誤りを抑える際のサンプリング回数を最大63倍削減する、Spacetime PECという手法を発表しました。IBM Research、誤り抑制サンプリングオーバーヘッドを63倍削減するハイブリッドSpacetime PECを実証。2つ目、ペンシルベニア大学の研究チームが、室温で動くダイヤモンド量子レジスタ上で、1つのゲートで複数の量子ビットを同時にもつれさせることに成功しました。ペンシルベニア大学、室温ダイヤモンド量子レジスタ上で単一ゲート並列もつれを実証。
続いて、企業の資金調達と人事の動きを2本紹介します。3つ目、アムステルダムのスタートアップFortaegis Technologiesが、量子安全なセキュリティ技術の展開に向けて5,000万ドルを調達しました。Fortaegis Technologies、ハードウェアにルート付けされた量子安全なSecure Computeアーキテクチャ展開のため5,000万ドルのSeries Aを調達。4つ目、Quantum Motion、SQC、Lawrence Semiconductor、Pasqalの4社で幹部人事が発表されました。人事ニュース:Quantum Motion、SQC、Lawrence Semiconductor、Pasqalにおける戦略的人事。
最後に、企業の解説記事が1本です。NVIDIAは量子コンピュータそのものは作らず、開発や活用を助けるソフトウェアや基盤を提供している、という内容です。NVIDIAとは?。
この中から詳しく見ていくのは3本です。1本目はIBM ResearchのSpacetime PEC、2本目はFortaegis Technologiesの資金調達、3本目はペンシルベニア大学の並列もつれ実証です。では1本目、IBM Researchの発表から見ていきます。
IBM Researchが、量子コンピュータの誤りを抑える新しい手法、Spacetime PECを発表しました。これは、確率的誤り打ち消し、PECという手法と、誤りを検出してそのデータを捨てる方法を組み合わせたものです。この手法により、誤りを抑えるために必要なサンプリングの回数を、従来のPECと比べて最大63倍削減できたと報告しています。検証は27量子ビットの超伝導プロセッサibm_aachenで行われました。
この結果は、量子コンピュータの実用化に向けた重要な進歩と言えます。誤りを抑えるためのコストが大幅に下がったわけですからね。ただ、まだ示されていないこともあります。この手法が、より大規模な回路や、実用的な計算タスクでも同じように機能するかどうかは、今後の検証が必要です。次に、より大きな量子ビット数での実証が出れば、この手法の実用性がよりはっきりするでしょう。
続いて2本目、Fortaegis Technologiesの資金調達です。アムステルダムを拠点とするハードウェアセキュリティのスタートアップ、Fortaegis Technologiesが5,000万ドルのSeries Aラウンドを完了しました。この資金を使って、量子コンピュータによる復号リスクに対抗するためのセキュリティ技術の商業生産とグローバル展開を加速させるとのことです。
Fortaegisの技術は、シリコンの物理的な製造ばらつきから暗号鍵を生成するものです。鍵をチップの中に保存しないため、鍵が盗まれるリスクを排除できるとしています。調達資金はFPGA展開の拡大と、カスタムASICの開発に充てられる予定です。まだ、この技術が実際の製品として市場でどれだけ受け入れられるかは、これからという段階ですね。今後の展開に注目したいところです。
3本目は、ペンシルベニア大学の研究です。室温で動作するダイヤモンド中の量子レジスタで、1つのゲートで4つの量子ビットを同時にもつれさせることに成功しました。この手法では、4量子ビットのGHZ状態を14.8マイクロ秒で生成でき、従来の逐次方式と比べて約10倍高速です。忠実度も向上しており、量子誤り訂正や量子センシングへの応用が期待されています。
室温で動く量子レジスタは、冷却装置が不要になるため、実用化に向けて大きな利点があります。今回の成果は、その室温動作の量子レジスタで、より高速に、より正確にもつれ状態を作れることを示した点で意義があります。今後は、この手法を他の材料にも応用できるかが鍵になりそうです。
今日の3本、いかがでしたか。1本目は誤り抑制のコスト削減、2本目は量子安全なセキュリティへの投資、3本目は室温での高速なもつれ生成と、それぞれ違う角度から量子コンピュータの実用化に迫る動きでした。クオンタムビュー、今日はこの辺で。またお会いしましょう。
9月19日付で、IBM Researchが誤り抑制の新手法「Spacetime PEC」を発表しました。誤りを検出して捨てる方法と従来のPECを組み合わせ、サンプリング回数を最大63倍削減。27量子ビットのプロセッサibm_aachenで実証しています。IBM Research、誤り抑制サンプリングオーバーヘッドを63倍削減するハイブリッドSpacetime PECを実証。久保田さん、この63倍という削減は、量子コンピュータの実用化にどのくらいのインパクトを持つのでしょうか。
まず、63倍というのは標準のPECと比べての話です。PECというのは、誤りを確率的に打ち消す手法ですが、そのために必要なサンプリング回数が指数関数的に増えるという課題がありました。今回のSpacetime PECは、誤りを検出して捨てる方法を組み合わせることで、そのサンプリング回数を大幅に減らせることを示しました。つまり、同じ精度を出すのに必要な計算コストが下がる、ということです。これは、実用化に向けて大きな前進です。
ただ、まだ示されていないのは、この手法がより大規模な回路でも機能するかどうかです。今回の実証は27量子ビットで、回路も比較的小規模です。次に、100量子ビットを超える規模や、実用的な計算タスクで同じような削減効果が出れば、この手法の実用性がよりはっきりするでしょう。
(1) 「指数関数的に増える」というのは、回路が大きくなるほど、必要なサンプリング回数が急激に増えていく、ということです。
(2) つまり、今回の手法は同じ精度を出すのに必要な計算コストを大幅に下げられる、ということですね。
アムステルダムを拠点とするハードウェアセキュリティのスタートアップ、Fortaegis Technologiesが、量子コンピュータによる復号リスクに対抗するため、5,000万ドルのSeries Aラウンドを完了しました。Fortaegis Technologies、ハードウェアにルート付けされた量子安全なSecure Computeアーキテクチャ展開のため5,000万ドルのSeries Aを調達。調達資金はFPGA展開の拡大とカスタムASIC開発に充てられます。久保田さん、この技術は従来のソフトウェア暗号と比べて、具体的に何が違うのでしょうか。
有沢さんの質問にお答えします。従来のソフトウェア暗号は、鍵をメモリやファイルに保存するため、そこを狙われるリスクがありました。Fortaegisはシリコンの物理的な製造ばらつきから鍵をその場で生成するので、鍵をチップに保存せず、盗む対象そのものをなくします。これが大きな違いです。この技術が実用化されれば、量子コンピュータによる復号攻撃に対して、鍵の保存という弱点を排除した形で耐性を持てる、という点で前進です。ただ、まだ示されていないのは、この手法で生成した鍵が本当に量子コンピュータの攻撃に耐えるのか、実運用での検証です。次に、カスタムASICが開発され、実際のデータセンターや防衛用途で採用されたという報告が出れば、決定的になるでしょう。
(1) 「その場で生成する」というのは、鍵をあらかじめどこかに保存しておくのではなく、必要なときにその場で作り出す、ということです。保存する必要がないので、盗まれる心配がなくなります。
(2) つまり、Fortaegisの技術は、鍵を保存しないことで盗む対象そのものをなくし、量子コンピュータの攻撃に備える、ということですね。
9月19日付で、ペンシルベニア大学の研究チームが、室温で動作するダイヤモンド中の量子レジスタで、1つのゲートで4つの量子ビットを同時にもつれさせることに成功しました。4量子ビットのGHZ状態を14.8マイクロ秒で生成し、従来の逐次方式と比べて約10倍高速です。ペンシルベニア大学、室温ダイヤモンド量子レジスタ上で単一ゲート並列もつれを実証。久保田さん、この「室温」で動くという点は、量子コンピュータの実用化にとってどのくらい重要な意味を持つのでしょうか。
室温で動く量子レジスタは、極低温冷却が不要になるため、装置の小型化や消費電力の削減につながります。今回の成果は、その室温動作の中で、1つのゲートで複数の量子ビットを同時にもつれさせ、従来より10倍高速かつ高忠実度で状態を作れることを示した点が前進です。ただ、まだ示されていないのは、この手法が量子誤り訂正や量子センシングの実際のタスクで、どれだけ有効に機能するかです。次に、この並列もつれを応用した誤り訂正プロトコルの実証や、他の材料への応用報告が出れば、より決定的になるでしょう。
「並列もつれ」というのは、複数の量子ビットを量子もつれという特殊な関係にまとめて入れることを、1つのゲート操作で同時にやってしまう、ということですね。つまり、室温で動く量子レジスタで、従来より10倍高速かつ高精度に、複数の量子ビットを一度にもつれさせられることを示した、ということですね。
そうですね。今日の3本は、どれも「量子コンピュータの実用化」という同じ方向を向いてはいますが、中身はばらばらです。IBMは誤りを抑えるコストを下げ、ペンシルベニア大学は室温で高速にもつれを作る。Fortaegisは量子による攻撃から守る側の話です。3つが同じ流れで進んでいるわけではありません。強いて共通点を言えば、いずれも「次の実証待ち」の段階だということです。次に見ておくべきは、IBMの手法が100量子ビットを超える規模で本当に効くのか、その報告が1つ出るかどうかでしょう。
今日の米国市場です。量子コンピュータ関連10銘柄のうち、上昇は4銘柄、下落は6銘柄でした。平均では-0.64%と、やや軟調でした。いちばん上げたのはIQMで+7.92%、いちばん下げたのはQuantinuumで-5.36%でした。
今日の3本はどれも次の実証待ちという点で共通していました。特にIBMの手法が100量子ビットを超える規模で効くかの報告が楽しみです。明日の夜もこの時間にお会いしましょう。




