NVIDIAが2026年9月23日、話者分離(ダイアライゼーション)モデル Nemotron 3 Diarization を公開しました。音声の中で「いつ、誰が話したか」を判定するモデルで、最大8人までの話者に対応し、ストリーミング(逐次)処理とまとめて処理するオフラインの両方で動きます。パラメータ数は 1億(100M)、ライセンスは商用利用もできる OpenMDW-1.1 です。
何をするモデルか
このモデルが出すのは、話者ごとに「話している区間」です。10ミリ秒ごとに、8人ぶんの「その人が話している確率」を0〜1で出します。発言の中身を文字にする機能は持っていません。
NVIDIAは、話者の区間を別の音声認識(ASR)モデルと組み合わせれば「誰が何を言ったか」付きの書き起こしが作れる、と説明しています。組み合わせる相手として、同社の Nemotron ASR 3.5 と Parakeet TDT 0.6B v3 の名前を挙げています。
話者はあらかじめ声を登録しておく必要はなく、出てきた順に区別されます。
公表されている数字
| 公開日 | 2026年9月23日 |
| 用途 | 話者分離(誰がいつ話したか)。文字起こしは別のモデルで行う |
| 最大話者数 | 8人 |
| パラメータ数 | 1億(100M) |
| 構造 | Sortformer。31層のTransformerエンコーダ(RoPE付き) |
| 入力 | 16kHz・モノラルの音声(wav、flac、opus、mp3) |
| 出力 | 10ミリ秒ごとの、8人ぶんの発話確率 |
| 遅延の設定 | 30.4秒(オフライン)、1.04秒、0.64秒、0.32秒 の4段階 |
| 学習データ | 実際の会話 約1万時間 + 合成した多人数の会話 82,611時間 |
| 動作環境 | Linux、NVIDIAのAmpere・Ada Lovelace・Hopper・Blackwell世代のGPU、NeMo |
| ライセンス | OpenMDW-1.1(商用利用可) |
評価の数字は2種類ある
第三者のベンチマーク:Voice Arena
Voice Arenaが公開している話者分離の順位表「Diarization-Bench」で、Nemotron 3 Diarization は 話者分離の誤り率(DER)14.72% で1位です。2位はブルノ工科大学(BUT FIT)の DiariZen で 19.34%、NVIDIAは「次点より約24%低い」としています((19.34−14.72)÷19.34で23.9%と、計算は合います)。NVIDIAの前のモデル Streaming Sortformer 4spk v2 は 24.61% でした。NVIDIAは、12のシステムのうち1位だったとしています。
このベンチマークの音声は、英語の139の会話、合計21.97時間で、1つの会話の話者は2〜8人、対面が115、オンラインが24です。正解は人が確かめたもの1つです。つまり、この1位は英語の会議・会話の音声での結果です。
NVIDIA自身の評価:DIHARD III
モデルの説明書には、話者分離の標準的なデータセット DIHARD III での、NVIDIA自身の測定が載っています。
| モデル | 遅延 | DER(話者1〜4人) | DER(5〜9人) | DER(全体) |
|---|---|---|---|---|
| 前のモデル(4spk-v2.1) | 30.4秒 | 13.98 | 40.21 | 19.09 |
| Nemotron 3 Diarization | 30.4秒 | 9.13 | 27.58 | 12.73 |
| Nemotron 3 Diarization | 0.32秒 | 9.69 | 29.49 | 13.55 |
遅延を30.4秒から0.32秒まで縮めても、誤り率の悪化は全体で0.82ポイントにとどまっています。一方、話者が5人以上になると誤り率は27〜29%台に上がり、1〜4人のときの3倍ほどになります。
読みどころ
リアルタイムに近い使い方で、ほとんど落ちない。0.32秒の遅延でも、オフラインとの差は1ポイント未満です。会議の字幕や通話の記録のように、話しているそばから「誰の発言か」を出したい用途に向いた性質です。
人数が増えると難しくなる。話者5人以上では誤り率が大きく上がります。NVIDIA自身も、雑音、強い残響、遠くのマイク、学習時と違う種類の音声、長い会話では、聞き逃しや話者の取り違えが増えうると書いています。9人以上の会話には、そもそも対応していません。
学習データの出どころを明かしている。公開データと使用許諾を得たデータで学習しており、そのうちDavid AIから許諾を得た実際の多人数会話を加えたことで、誤り率が11.19%から10.42%へ0.77ポイント下がった、と数字で示しています。多言語の合成会話は21言語にわたるとしています。
どう見るか
1億パラメータという小さなモデルで、第三者の順位表で首位に立ち、しかも商用利用できるライセンスで公開された、というのが要点です。すでに Argmax が自社の SDK(Argmax Pro SDK 3)で対応したとしています。
首位になった Voice Arena の評価は、英語の約22時間の音声によるものです。
発表はNVIDIAのブログ(Hugging Face)、仕様と評価はモデルの説明書、順位表はVoice ArenaのDiarization-Bench、ライセンスはOpenMDW-1.1にあります。




