Infleqtion(インフレクション)は、原子を使って量子コンピュータや量子センサーをつくっている米国の会社です。本社は米国コロラド州にあり、英国にも研究と製造の拠点を持っています。2026年2月には、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて、ニューヨーク証券取引所に上場しました。
同社の量子コンピュータは「中性原子方式」です。電気を帯びていない原子をレーザーで一つずつ捕まえて並べ、その原子を量子ビットとして使います。原子はどれも同じ性質を持つので、数を増やしやすいのが特長です。同社はこの方式の量子コンピュータを「Sqale」と呼んでいます。2025年には、日本の量子ムーンショットプログラムの一環として、分子科学研究所(愛知県岡崎市)に最大500量子ビットの中性原子方式のシステムを出荷しました。2026年3月には、英国の国立量子コンピューティングセンターに100物理量子ビットのシステムを納めています。
量子コンピュータを実用的にするには、計算の途中で起きる誤りを直す「量子誤り訂正」が欠かせません。誤りを直すために、たくさんの物理量子ビットをまとめて1つの「論理量子ビット」として扱います。Infleqtion は2026年9月、Sqale 上で80個の物理量子ビットに30個の論理量子ビットを符号化し、それらを互いにもつれさせることに成功したと発表しました。2028年に100個、2030年に1,000個の論理量子ビットを目指すとしています。誤り訂正のためのソフトウェア「qLDPC」をオープンソースで公開し、NVIDIA の開発環境とも組み合わせています。
計算機だけでなく、原子の性質を使った精密な測定の技術も同社の柱です。原子時計を使って GPS が使えないときにも正確な時刻を届ける仕組みや、NASA と組んで2030年に宇宙で量子重力センサーを試す計画などを進めています。2026年4〜6月期の売上高は1,263万ドルで、前年の同じ時期の約2.2倍でした。
たとえるなら、中性原子方式は「光のピンセットで原子を一粒ずつ並べた盤面」で計算するようなものです。よくある誤解として、量子コンピュータの会社は計算機だけをつくっていると思われがちですが、Infleqtion のように、同じ原子の技術を時計やセンサーにも広げている会社もあります。関連する用語には「中性原子」「論理量子ビット」「量子誤り訂正」「量子センシング」があります。




