フランスの Mistral AI が2026年10月6日、新しい大規模言語モデル Mistral Large 4(略称 ML4)のパブリックプレビューを始めました。文章と画像を入力でき、100万トークンの文脈を扱えます。いまは同社の API(Mistral Studio)で試せる段階で、モデルの重みは「今月末までに公開する」としています。
公表されている規模
規模の数字は、同社の発表ブログと開発者向けドキュメントで少し違います。
| 項目 | 発表ブログ | 開発者向けドキュメント |
|---|---|---|
| 総パラメータ数 | 約1兆 | 1.05兆 |
| 推論時に動くパラメータ数(アクティブ) | 490億 | 520億 |
| 画像用のエンコーダ | 記載なし | 16億 |
| 文脈の長さ | 記載なし | 100万トークン |
どちらも、複数の専門家モデルを使い分ける Mixture-of-Experts(MoE)構造です。同社は ML4 を「これまでで最大かつ最も高性能なモデル」と説明しています。API のモデル名は mistral-large-4、版は v26.10 です。
料金
開発者向けドキュメントでは、次の定価に打ち消し線が引かれ、その半額が表示されています。発表ブログに載っているのは定価のほうです。半額の期間や理由は書かれていません。
| 100万トークンあたり | 定価 | ドキュメントに表示されている値段 |
|---|---|---|
| 入力 | 1.36ドル | 0.68ドル |
| キャッシュされた入力 | 0.14ドル | 0.07ドル |
| 出力 | 4.18ドル | 2.09ドル |
構造化出力、関数呼び出し、文書への質問応答、バッチ処理、エージェント、組み込みツールに対応しています。
学習と提供
同社によると、ML4 は欧州にある自社のデータセンターで、NVIDIA Grace Blackwell の GPU 3,800基を使って一から学習しました。プレビューも同じ設備で提供しています。学習データの多くは多言語で、EU のすべての公用語を含む160以上の言語にわたるとしています。
強化学習は約3,000基の GPU で回しており、1回の学習で1日あたり約330億トークンを生成し、そのうち約160億トークンを学習に使っているといいます。この強化学習はまだ続いていて、今後数週間から数か月で性能が上がる見込みだと同社は述べています。
重みを公開するまでの間は、サイバーセキュリティの専門企業や審査を経た提携先、国の機関とともに、実際の環境で試験(レッドチーミング)を行うとしています。これらの参加者は、モデレーションを弱め、サイバー関連の能力を広げた同じモデルを使います。提供地域は世界の複数の地域に広げ、欧州では、Mistral が他のデジタルサービス事業者に頼らず、欧州の法律のもとで一貫して運用する形でも提供するとしています。
公表されている評価
評価の多くは同社の測定です。第三者による評価(Artificial Analysis、vals.ai、Surge AI、Lakera)と書かれているものも含みます。
| 分野 | 評価 | 結果(同社の発表) |
|---|---|---|
| サイバーセキュリティ | Artificial Analysis Cyber Index | 世界の上位5モデルに入り、中国以外で開発されたオープンウェイトモデルの中で首位 |
| 同 | 同指数の、実在する脆弱性を再現して修正する試験 | 82%(全モデルで最高) |
| 同 | Cybench(セキュリティ競技から取った40問) | 93% |
| コーディング | DeepSWE v1.1 / SWE-Atlas-QnA / Terminal-Bench 4 | 61.7% / 59.4% / 28.3% |
| 同 | Coding Agent Index | 49.8%(DeepSeek V4 Pro 0813、Qwen3.8 Max を上回る) |
| 同 | Surge AI による目隠しの人手評価(1〜5点) | 5モデル中2位の3.74(1位は Claude Opus 5 の4.22) |
| 業務の自動化 | AutomationBench(657の業務フロー) | 59.9% |
| 画像 | Dense 200 | 42%(GPT-6 Astra は41%) |
| 金融・法務 | vals.ai の Finance Agent v2、Harvey の Legal Agent Benchmark | どちらも GPT-6 Astra を上回る。法務ではすべてのオープンソースモデルを上回る |
| 安全性 | Lakera の B3(間接的なプロンプト注入への耐性) | 攻撃の93.3%に耐えた |
脆弱性を再現して修正する試験について同社は、Claude Opus 5.5 や GPT-6 Astra などの非公開モデルは、課題そのものを断るため、ほぼ0点だったと説明しています。一方で、JailbreakBench などから取ったサイバー攻撃に関する悪意ある依頼を断る率は、他のどのオープンソースモデルよりも高かったとしています。
今後の予定
同社は、今月末までに重みを公開し、あわせてモデルの構造、追加の評価結果、学習後の調整の方法を公表するとしています。ML4 は今後、用途別に特化した Mistral のモデルの土台にもなる予定です。同社は、30億ユーロを調達したシリーズDの資金で進めるロードマップの最初の成果だと位置づけています。
どう見るか
今回の発表で、プレビューの提供開始、API の料金、評価の結果が示されました。一方で、総パラメータ数とアクティブパラメータ数は、発表ブログ(約1兆・490億)と開発者向けドキュメント(1.05兆・520億)で一致していません。重みとライセンスは、ドキュメントでは「Coming soon」の表示で、まだ公開されていません。ドキュメントに表示されている半額の料金が、いつまでの扱いなのかも示されていません。評価は、第三者による評価と同社自身の評価が混ざっていて、表の多くは同社の発表として示されたものです。


