Google DeepMindは、ロボティクス向けの物理推論モデル「Gemini 4 Argon」(以下、Argon)を発表しました。同社によると、Argonは物理的理解、コード生成、視覚意味推論において大きな進歩を示し、ロボティクススタック全体にわたる新たなワークフローを実現するとともに、物理的AGI(汎用人工知能)への道筋を加速させるということです。
同社の測定では、3D環境における物理的・空間的問題を理解し解決するモデルの能力を試す「身体性推論(ERQA)」ベンチマークにおいて、Argonは純粋な推論で87%を記録し、他のフロンティアモデルを上回りました。Argonは汎用の物理推論モデルとして、ロボティクスのライフサイクル全体に適用できるとされています。
ロボット制御におけるArgonの活用
Argonはロボット制御の分野で、以下のような活用が示されています。
- Spotの移動操作: Boston Dynamics Spot(12自由度の脚と6自由度のアーム)を制御し、フットペダル式のゴミ箱を踏んでソーダ缶を捨てるという新しいスキルを学習します。Argonは足踏み式ゴミ箱のMuJoCoデジタルツインを作成し、物理的なペダルを踏む前に動作を練習します。
- ゼロショット制御: 単純なロボットアームを制御し、倒れたマグカップを起こして丸めたナプキンをその中に入れます。Argonは視覚座標ハーネスと動作プリミティブを用いて、複数ターンにわたってこのタスクを実行します。
- オムニ制御: 「Gemini Omni World Model」内のロボットを誘導し、散らばった5つのスクラブルタイル(G, R, A, N, O)を「A-R-G-O-N」の順に一列に並べ替えます。Argonはタイムスタンプ付きのアクションプロンプトを書き、中間のロールアウトキーフレームを検査し、プロンプトを洗練させることで、閉じた視覚ループで誘導します。
Real2Simと物理理解の実現
Argonは、実世界からシミュレーションへの変換(Real2Sim)にも対応します。ロボットのカメラ映像から、実際の物体のように見え、接触時に同様に動作するシミュレーションアセットを取得または作成し、反復的な視覚推論ループでシミュの視覚と接触イベントを実データに一致させます。また、人間の頭部装着型カメラ映像から、タスク関連オブジェクトを特定し、凹型容器の粗いバウンディングボックスを複合凸分解メッシュに置き換え、人間の手の軌道を76自由度の双腕ヒューマノイド(22自由度の5本指ハンド)にリターゲッティングすることもできます。さらに、紙に描かれた大まかなスケッチの写真から、GPU加速のmujoco_warpシーンを自動構築し、投擲軌道を合成して、閉ループ物理で目標を検証し、Blender 4.5 Cyclesレンダリングをエクスポートすることも可能だとしています。
物理理解の分野では、Argonは巧緻操作の詳細なセグメンテーションとテキストラベルをビデオから提供できます。136秒間にわたって正方形の紙を折り紙のキツネに折る双腕ALOHA 2ロボットの映像から、エピソード目標(G1)、6つの連続するセマンティックサブタスク(G2)、17の接触レベルの原子プリミティブ(G3)、自動品質管理(QC)の再重み付けという4レベルの時間整合型の振り返りアノテーション階層を生成します。また、12個のボールのうち1個だけ重さが異なる(重いか軽いか)ボールを、3回の計量で特定する「12ボール天秤パズル」をロボットで再現するために、双腕Franka FR3のMuJoCo環境と関節式Roberval天秤を構築し、視覚のみの閉ループソルバーを作成することもできます。さらに、人間のUMIデータセットに含まれる60秒間の両腕リングソートのエピソードで評価され、密な価値関数とタスク進行の予測を生成し、軌道を正・中立・負の進行勾配を持つ28のセグメントに分解します。
研究と自己改善への応用
Argonは研究と自己改善の分野でも活用できます。実テーブルのRGB写真1枚から、較正されたMuJoCoシミュレーションツインを自律的に構築し、新しいタスクを定義して、閉ループ動作生成器を合成し、4,500以上のドメインランダム化エピソードをシミュレーションで収集し、汎用の視覚・言語・行動(VLA)モデルの性能向上に使います。同社の測定では、これにより実世界の物理ロボットの成功率が56%から75%に向上し、完了時間が35秒から24秒に短縮されたということです。また、6自由度のアームでは、試行と自己反省を通じて、ピックアンドプレースタスクの実行速度と配置精度を反復的に自己改善できます。さらに、1つのプロンプトあたり1件の論文について、ロボット制御の論文とリリース済みチェックポイントを読み、物理モデルと閉ループコントローラを自己完結型のMuJoCo WebAssemblyブラウザラボに移植し、ヘッドレスChromiumで検証することもできるとしています。
どう見るか
今回の発表では、Argonの能力を示すベンチマーク結果と、ロボット制御、Real2Sim、物理理解、研究と自己改善の4分野における代表的なプロンプトが公表されました。一方で、ERQAの具体的な評価方法や比較対象となったモデルの詳細、シミュレーションで収集したデータを用いた成功率向上の実験条件などは資料に明記されていません。また、Argonの提供はGoogle AI Studio(Google AI Ultra加入者向け)、Gemini API(有料ティア)、Google Antigravity(Google AI Ultra加入者向け)で開始されていますが、APIの利用料金や提供地域は、この資料には記載されていません。数値はいずれも同社による測定で、第三者による測定結果は示されていません。




