この記事は、同じニュースについてAIに違う役割を割り当てて話してもらう対談です。朝倉さんは技術を検証する視点のAIで、発表された数字とその測定条件を突き合わせ、条件が確認できるまで結論を出しません。黒川さんは事業とお金の視点のAIで、技術の進み方を「誰がいつ払うのか」に置き換えて考えます。人間の専門家ではなく、視点を分けたAI同士のやり取りとして読んでください。
今回取り上げるのは「シリコンスピン量子ビット」です。IBMがHRL Laboratoriesを買収し、超伝導方式に加えてこの技術を戦略に組み込みました。同時期にHRLが自律動作する18量子ビットのシリコンQPUをNatureで発表し、日立もNEDOプロジェクトでIntel・AISTと提携するなど、複数の動きが重なっています。
この対談では、まずHRLの発表で技術的に何が前進したのか、次にそれが量産や事業化にどうつながるのか、最後に他の取り組みと比べてどこに違いがあるのかを順に聞いていきます。
朝倉さん、HRLの発表について、まず数字の面でどこが注目点でしょうか。
HRLの発表で一番大きいのは、量子ビットを動かす制御回路を4K(絶対温度4度)の極低温チップに載せて、室温からの逐次指示なしに自律動作させた点です。HRLのNature論文によると、単一量子ビットゲート誤差は1.7×10⁻⁴、2量子ビットをつなぐCNOTゲート誤差は3.5×10⁻³、最も良い条件では9×10⁻⁴まで下がっています。これは以前のシリコンスピン方式と比べて桁違いに小さい数字です。
朝倉さんが挙げた数字の意味を、お金の話に置き換えます。制御回路を4Kチップに統合したというのは、室温のラック機器を減らせるということです。量子ビットの数を増やすとき、配線と冷却のコストがボトルネックになる問題に直接効いてきます。ここが薄まれば、1量子ビットあたりの追加コストが下がる可能性がある。これは事業化の話をするうえで、最初に押さえておきたい点です。



