Alibabaが、大規模言語モデルの新シリーズ「Qwen3.8」として2つのモデルをHugging Face上で公開しています。ひとつは総パラメータ2.4兆のMoEモデル、もうひとつは27Bのdenseモデルです。MoE(混合エキスパート)とは、内部に多数の小さな専門家ネットワークを持ち、そのうち一部だけを動かす仕組みです。denseは、すべてのパラメータが毎回動く従来型の構成を指します。狙いの異なる2つが同時に出ている形です。
小さいほうのQwen3.8-27Bは、64層のdenseモデルです。モデルカードでは「画像と動画を理解する、生まれつきの視覚言語モデル」と説明されています。文脈長は262,144トークンで、最大1,000,000トークンまで拡張できるとしています。ライセンスはApache 2.0です。thinking(回答前に内部で考える動作)は既定でオンで、リクエストごとに無効にできるとされています。深さはreasoning_effortでxhigh/medium/lowから選べます。同社が公表したベンチマークは、SWE-bench Pro 61.7、GPQA Diamond 89.2、LiveCodeBench v6 90.3、コンピュータ操作のOSWorld-Verified 84.3、ブラウザ操作のWebArena-Verified 64.8です。
大きいほうのQwen3.8-2.4T-A95Bは、総パラメータ2.4兆のうち、1トークンごとに動くのは95Bだとしています。エキスパートは512個で、1トークンあたり10個のRoutedと1個のSharedが動く構成です。92層、隠れ次元8192で、文脈長は262,144トークン、最大1,010,000トークンまで拡張できるとしています。こちらはテキスト専用で、thinkingは常時オンです。出力の前に思考部分が入ります。ライセンスはApache 2.0ではなく、qwen3.8-maxです。公表値はGPQA Diamond 92.6、SWE-bench Pro 67.7、Terminal Bench 2.1 86.6、HLE 43.6で、27Bを上回っています。
数字が対照的なのはダウンロード数です。2026年8月17日時点のHugging Face APIでは、27Bが415,039回、2.4Tが9,465回でした。40倍以上の開きです。さらに、有志が作った量子化版であるunslothのGGUF(手元のパソコンで動かすときによく使う形式)は2,727,609回で、公式のリポジトリを上回っています。当サイトが同日に伝えたHugging Faceのレポートでは、累計ダウンロードの83%が10億パラメータ未満のモデルで、1000億パラメータ超は1%だったとされています。規模を競う発表と、実際に多く取得されているモデルとが、別の場所にある形です。
呼び名にも動きがあります。当サイトは推論トークンの制御方式を4社比較した記事で、Alibabaの制御をenable_thinking/thinking_budget、OpenAIをreasoning_effortとして整理しました。今回の27Bのモデルカードは、OpenAIと同じreasoning_effortという名前を使っています。1件の観測ですが、呼び方が寄ってきている例です。
最後に、この数字で分からないことを挙げます。ダウンロード数は取得された回数であり、実際に動かされた回数ではありません。ベンチマークはいずれもAlibaba自身が公表した値で、第三者による検証ではありません。本記事の内容は、いずれも2026年8月17日時点で確認したものです。


