ステーブルコインとは、価格を法定通貨などに連動させることを狙った暗号資産です。連動させることを英語では「ペッグ」と呼びます。ビットコインのように値が大きく動かないことを目指した設計になっています。使われ方は主に三つです。暗号資産を売買する人が一時的に資金を置いておく待避先、送金、そして決済です。ただし最初に断っておきたいことがあります。「安定している」のは設計の目標であって、保証ではありません。裏付けとなる資産が足りなくなれば、連動は外れます。
では、どうやって値を保つのでしょうか。一般的には三つの型に分けられます。一つめは法定通貨の裏付け型です。発行した額と同じだけの現金や国債などを預かって持ち、それで価値を支えます。USDCとUSDTがこの型です。二つめは暗号資産の担保型です。別の暗号資産を過剰に預けることで価値を支えます。三つめはアルゴリズム型です。裏付け資産を持たず、需給の調整によって価格を保とうとします。なお、アルゴリズム型については2022年に大きく崩れた例が知られていますが、本記事では一次情報に当たっていないため詳細には立ち入りません。
いま主流なのは法定通貨の裏付け型です。そして銘柄はUSDT(Tether)とUSDC(Circle)の二つに強く偏っています。この二つで市場の大半を占めています。市場規模の合計額については、集計サイトごとに数字が食い違っていました。そのため本記事では具体的な合計額は書きません。
ここからが本題です。裏付けが本当にあるのかを、読者はどう確かめられるのでしょうか。USDCを例に見てみます。発行者のCircleは透明性に関するページを公開しています。以下は2026年8月17日時点の表示で確認できた内容です。
まず準備資産の中身です。同ページによると、システム上重要な金融機関への預金、その他の銀行預金、短期の米国債、翌日物の国債レポで構成されています。レポとは、国債を担保にした短期の資金貸借の取引です。そしてその大部分は、Circle Reserve Fund(USDXX)で保有されているとしています。これは米国証券取引委員会(SEC)に登録された2a-7の政府系マネー・マーケット・ファンドです。マネー・マーケット・ファンドは、短期の債券などに投資する投資信託のことです。
次に、誰がそれを検証しているかです。同社によると、大手会計事務所(Big Four)が毎月、第三者としての保証を出しています。確認する内容は、準備資産の価値が流通しているUSDCの額を上回っていることです。その際の基準は、米国公認会計士協会(AICPA)の保証基準だとしています。
開示の頻度も分かれています。保有内容と、発行・償却の流れは毎週の開示です。第三者による保証報告は毎月です。そして月次の報告書は、2018年10月から2026年6月までの分が公開されています。つまり、発行者の説明をそのまま信じるのではなく、読者が自分で報告書をたどって確かめられる仕組みが用意されている、ということです。
続いて日本での扱いです。日本ではステーブルコインは「電子決済手段」として資金決済法に位置づけられています。2025年6月13日に改正資金決済法が公布されました。それを受けた政令・内閣府令が2026年5月22日に公布され、2026年6月1日に施行されています。詳細は金融庁の公表資料で確認できます。
今回の整備で入ったものを並べます。一つめは、電子決済手段等取引業者に対する国内資産保有命令の対象範囲を明確にしたことです。二つめは、「仲介業」という区分の新設です。登録制で、利用者への説明義務、禁止行為、記録の保存などが課されます。三つめは、信託型の電子決済手段についての変更です。裏付け資産の運用先として「一定の国債」と「中途解約できる定期預金」が認められました。ただし運用比率の上限と、元本の確保が条件とされています。
この整備に先立って、パブリックコメントが実施されています。期間は2025年12月16日から2026年2月27日までです。62の個人・団体から、259件の意見が寄せられたとされています。
最後に、ステーブルコインを見るときに押さえる点を整理します。第一に、何で価値を支えているかです。法定通貨の裏付けか、暗号資産の担保か、アルゴリズムかで、性質は変わります。第二に、誰がそれを検証し、どのくらいの頻度で開示しているかです。USDCの場合は、大手会計事務所による毎月の保証と、毎週の保有内容の開示という形でした。第三に、日本の制度でどう扱われるかです。電子決済手段として資金決済法の対象であり、2026年6月1日から仲介業の登録制などが加わっています。
最後に、日本円建てのステーブルコインにも触れておきます。JPYC株式会社は2025年8月18日、資金移動業者としての登録を受けました。登録番号は関東財務局長第00099号です。同社の発表によると、発行するJPYCは「日本円と1:1で交換可能な日本円建ステーブルコインであり、裏付け資産は日本円(預貯金および国債)によって保全します」としています。対応するブロックチェーンはEthereum、Avalanche、Polygonの3つです。なお同社は、これが以前の「JPYC Prepaid」(前払式支払手段)とは別のものであり、両者の交換は行わないとしています。
日本円建てのものが国内の登録を受けて出てきたことで、ここまで見てきた枠組みが実際に使われる段階に入りました。裏付けを何で持つか、誰が検証するか、どの制度の下で扱われるか。確かめる観点は、円建てでもドル建てでも同じです。
なお、本記事の内容はいずれも2026年8月19日時点で確認したものです。制度や開示の内容は変わる可能性があります。実際に確認する際は、上記の一次情報をご覧ください。

