Blockstreamが運営するビットコインのサイドチェーンLiquidで、連合ウォレットから約4,000 BTC(約3億2,000万ドル)が引き出されました。Blockstreamは9月7日 00:14(UTC)に公式のステータスページで事案を公表しています。
何が起きたか
Liquidは、ビットコインを預けて別の帳簿(サイドチェーン)で動かすための仕組みで、取引所や金融機関が使っています。預かったビットコインは連合ウォレット(Federation wallet)にまとめられています。
引き出しは、SideSwapという取引基盤のPAK(Peg-out Authorization Key、払い戻し許可鍵)を通って行われました。
⚠️ ただし、鍵は破られていません。Blockstreamは「その鍵も、ほかのどの連合の鍵も侵害されていない」と明記しています。SideSwapも「自社のどのシステムも侵入されていない」としています。
原因として両者が挙げているのは、Liquidが動いているElementsというソフトウェアの不具合です。SideSwapの説明によれば、経緯はこうです。
| 時刻(UTC) | 出来事 |
|---|---|
| 14:05 | 顧客がSideSwapの払い戻しサービスへ 4,000 L-BTC を送る |
| — | L-BTC がLiquid上で焼却され、正当な払い戻し許可が付く |
| 14:28 | 連合が顧客のビットコイン宛先へ 3,996 BTC を支払う |
つまり手続きとしては正規の払い戻しであり、問題はその前段——その4,000 L-BTCがElementsの不具合によって作り出されていたという点にあります。SideSwapは自社を非保管型(non-custodial)とし、利用者の資産は各自の鍵で管理されているため利用者側の対応は不要だとしています。
影響の範囲
- 止まっているもの: 橋渡しノードを一時停止。新しい取引を出せず、サイドチェーンは事実上 停止中
- 取引所: L-BTC の入出金を停止(または停止予定)と通知済み
- 影響を受けていないもの: USDT、DePix、RWA など Liquid 上の他の資産
「善意の側」と名乗っている
Blockstreamは引き出した側を、断定を避けて purported white-hat hackers(善意の側を名乗る者たち)と表現しています。両者はチェーン上で署名付きのメッセージをやり取りしており、引き出した側は大半を返す用意があるとしたうえで、先に不具合を直すことを条件に挙げています。まだ危険が残っているため、各ノードの更新も求めているとしています。
⚠️ 返還は約束であって、完了ではありません。この記事を書いた時点では、資金は戻っていません。
なぜ当サイトで扱うか
量子計算機とは関係のない事案です。暗号が破られたわけでも、計算能力で突破されたわけでもありません。鍵は無事で、正規の手続きが通り、その手前のソフトウェアが誤った残高を作ったという形です。
暗号資産の安全性を語るとき、鍵の強さに目が向きがちですが、実際に資産が動くのは鍵の周りにある手続きとソフトウェアです。今回はその典型で、「暗号が強ければ安全」という考え方の穴を示す事例として記録しておく価値があります。


