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量子コンピュータ関連銘柄 更新: 10/12 14:30(日本時間)
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暗号資産

量子耐性のビットコイン取引が初めて採掘―チェーンで実物を確認した

要約

2026年8月26日、量子コンピュータに耐える署名方式を使ったビットコイン取引が初めて採掘されました。ビットコインの規則は変えず、44,000 sat(数百円)を動かしました。ただし、これは通常のノードが中継しない特殊な取引で、ビットコイン自体を量子耐性にする恒久策ではなく、移行期間の暫定策です。

StarkWareは2026年8月26日、量子コンピュータに耐える方式で署名したビットコイン取引が、メインネットで初めて採掘されたと発表しました。ビットコインの合意規則を一切変えずに行われています。

同社は取引IDを公開しているので、当サイトでチェーンを直接確認しました。発表の内容は、実物と一致していました。

チェーンで確認したこと

項目実データ
取引ID305a24ffea912b9cf428f29ebf952321c96dab5bab284fc0d0801562f5abab07
含まれるブロック964,199(確定済み)
ブロックの時刻2026年8月26日 20時48分34秒(UTC)
採掘したプールMARA Pool
取引のサイズ1,403バイト
手数料5,179 sat
入力2件(39,179 sat と 10,000 sat)
出力1件(44,000 sat)

動いた額は44,000 satです。1 satはビットコインの1億分の1なので、日本円にすると数百円ほどにあたります。

注目すべきは入力の2件目です。ブロックエクスプローラはこの入力の型を「判別不能」と表示します。通常のビットコイン取引は型が決まっており、ここは空欄になりません。さらに、この入力の解錠スクリプトは1,168バイトありました。通常の署名は72バイト程度です。16倍の長さになっています。

この2つが、後述する「通常のノードは中継してくれない」という事情の裏づけになります。もう1件の入力は通常の形式で、手数料を払うために添えられたものと見られます。

何をしたのか

方式は「Quantum Safe Bitcoin(QSB)」と呼ばれ、StarkWareのAvihu Levy氏が2026年4月に実装と論文を公開したものです。実装はMITライセンスで、この記事の執筆時点でスターは213件でした。

いまのビットコインの署名は楕円曲線暗号にもとづいており、十分な規模の量子コンピュータができると、公開鍵から秘密鍵を割り出せるとされています。この問題への対処は、ふつう「ビットコインの規則を変える」方向で議論されてきました。

QSBはそこを迂回します。既存の規則の中だけで、量子コンピュータに耐える署名の代わりを作ります。具体的には、取引に結びつけた公開鍵をRIPEMD-160という関数で潰し、出てきた20バイトを署名の形式として解釈させます。ランダムな20バイトがこの形式の条件を満たす確率は、実装の説明によると約2の46乗分の1です。

つまり、条件を満たす値が出るまでひたすら計算を回します。実装のREADMEでは費用を75〜150ドルとしており、GPUでの探索速度も載っています。RTX PRO 6000で毎秒2億3,800万回、RTX 4070 SUPERで毎秒8,800万回とされています。実際の探索では「8枚のGPUで約6時間」かかったと記録されています。

数百円を動かすために数百ドルを計算に使う、という比率です。StarkWare自身も費用は「数百ドル」としています。

通常のノードは中継しない

この取引は合意規則には違反しませんが、通常のノードが中継する条件からは外れます。ビットコインには「規則違反ではないが、行儀が悪いので転送しない」という線引きがあり、QSBの取引はその外側にあるためです。

そこでStarkWareは、非標準の取引を受け付けるMARAのSlipstreamというサービスを使い、採掘者へ直接渡しました。実際にブロック964,199を採掘したのがMARA Poolであることは、上のとおりチェーンで確認できます。

普通の利用者が今日から使える方法ではないということです。

ビットコインが量子耐性になったわけではない

ここは誤解されやすいところで、StarkWare自身が発表の中で明確に否定しています。「これはビットコインそのものを量子耐性にするものではない」「ソフトフォークのほうが長期的には良い答えである」と書かれています。

恒久的な対処としては、ビットコインの規則そのものを変える提案が2つ、いずれも草案の段階で出ています。当サイトで確認したところ、内容は次のとおりでした。

提案題種別
BIP-360Pay-to-Merkle-Root(P2MR)仕様
BIP-361ポスト量子移行と旧署名の廃止情報提供

BIP-361についてはBIP-361草案、量子脆弱なECDSA/Schnorr署名を段階的に無効化する提案で取り上げています。

今回の成果が示したのは、規則を変えるまでの移行期間に、既存の仕組みだけでも手はあるということです。規則の変更には合意形成が要り、時間がかかります。その間、量子コンピュータの進歩を待つしかないわけではない、という位置づけになります。

当サイトで確かめたことと、確かめていないこと

取引がブロック964,199に含まれること、入力の型が判別不能であること、解錠スクリプトが1,168バイトあること、採掘したのがMARA Poolであることは、チェーンを直接引いて確認しました。

一方で、この署名が本当に量子コンピュータに耐えるかどうかは、当サイトでは検証していません。実装の説明では、Shorのアルゴリズムに対して約118ビット、Groverのアルゴリズムに対して約59ビットの強度があるとされています。この評価は実装者によるもので、第三者による査読を確認したものではありません。費用の数字も同様に、実装者と発表者による申告です。

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