この記事は、生成AIの主要2社が自ら公表している数字だけを並べて、いまどこに金額が動いているのかを見るものです。取り上げるのは Anthropic と OpenAI です。両社はいずれも非上場です。決算を開示する義務がありません。そのため公式に確認できるのは、各社が出した発表だけです。以下の数字は、いずれも2026年8月19日時点で確認できたものです。報道で伝えられている売上や損失の数字は使いません。
まず Anthropic です。同社は2026年5月28日のシリーズHの発表で、650億ドルを調達したとしています。ポストマネー評価額は9,650億ドルです。ポストマネー評価額とは、調達した資金を含めた時点での企業価値の評価です。この調達を主導したのは Altimeter Capital、Dragoneer、Greenoaks、Sequoia Capital です。同社はあわせて、既に約束されていたハイパースケーラーからの150億ドルにも触れています。そのうち50億ドルは Amazon からのものだとしています。同じ発表の中で、同社は「2026年5月にランレート売上が470億ドルを超えた」と記しています。
ここでランレートという言葉を説明します。ランレートは、いまの月次の売上を12倍して年換算した数字です。実際に1年間で得た売上ではありません。ある1か月の水準が今後12か月続くと仮定した計算です。ですから伸びが速い時期には大きく出ますし、伸びが止まれば下がります。実績の年間売上とは別のものとして読む必要があります。ここを飛ばすと数字を読み違えます。
Anthropic の発表によるランレートの推移を並べます。2025年末は約90億ドルです。2026年2月のシリーズGの時点で140億ドルです。2026年4月に300億ドル超となり、2026年5月に470億ドル超となっています。またコーディング向けの Claude Code については、ランレートが25億ドル超で、2026年の初めから2倍以上になったとしています。なお、黒字かどうかについては、この発表に記載がありません。
次に OpenAI です。同社は2026年3月31日に1,220億ドルの調達を完了したとしています。評価額は8,520億ドルです。共同主導には SoftBank、Andreessen Horowitz、D.E. Shaw Ventures、MGX、TPG、T. Rowe Price Associates が並びます。Amazon、NVIDIA、Microsoft も参加しています。Amazon の出資のうち350億ドルは、株式公開またはAGI到達が条件とされています。AGIとは、人間と同等に幅広い課題をこなせる人工知能を指す言葉です。事業面では、法人向けが売上の40%超を占めるとしています。そして2026年末には個人向けと並ぶ見込みだとしています。開発支援の Codex は週間利用者が300万人、APIは毎分150億トークン超を処理しているとしています。ただし、この調達に関するページ本体は取得できませんでした。金額・評価額・投資家は、複数の媒体で一致している値です。確認できた範囲はここまでです。
この記事の芯は、計算資源の確保です。両社はいずれも「ギガワット」という電力の単位で容量を押さえています。Anthropic は前述のシリーズHの発表で、Amazon から最大5ギガワットの新規容量、Google と Broadcom による次世代TPUで5ギガワット、そして SpaceX の Colossus 1 と Colossus 2 のGPU容量を挙げています。TPUは、機械学習の処理に向けて設計された専用のチップです。OpenAI は、NVIDIA と10ギガワットの提携を2025年9月に発表しています。最初の1ギガワットは2026年後半に配備されるとしています。さらにAMD と6ギガワットの提携を2025年10月に発表しました。Instinct MI450 の最初の1ギガワットは2026年後半からとしています。Broadcom とは推論向けチップを共同開発するとしています。数字の単位が金額とギガワットの両方で語られていることは、競争の焦点がモデルの性能だけでなく、電力と設備をどれだけ押さえられるかに広がっていることを示しています。
開発の道具やモデルの側でも動きが続いています。SpaceXがAIコードエディタCursorを600億ドルで買収完了し、その Cursor はコードホスティング「Origin」の提供を始めました。モデルではAlibabaが「Qwen3.8」の2モデルを公開しています。
まとめます。両社はいずれも、売上の伸びと同じ速さで計算資源に金額を積んでいます。一方で、採算がどうなっているかは両社とも公表していません。非上場であるため、外から確かめる手立てもありません。ですから、この2社の数字を見るときは、ランレートと実績を分けて読む必要があります。そして自社が公表した値と、外部の推計を分けて読む必要があります。本記事の数字は、いずれも2026年8月19日時点で確認できたものです。今後の発表で変わる可能性があります。




