8月30日のクオンタムビュー、始めます。今日入ってきたニュースは全部で5本です。まずは5本をざっと一覧でご紹介して、そのあと気になったものを久保田さんと詳しく見ていきます。
では5本、まいります。
まず教育と人材の動きから2本です。QuantrolOxとQURECA、実践的ハードウェアトレーニングのためのQuantum EDGE Academy立ち上げに向けて提携、量子計測・制御ソフトウェア企業のQuantrolOxが量子教育のQURECAと提携し、パイロットコホート、つまり最初に試験的に参加する受講者グループの登録を2026年9月に始める予定です。Who's News: Quantum Sky、IonQ、Pasqal、Global Quantum Intelligenceにおける戦略的人事任命、Quantum Sky、IonQ、Pasqal、Global Quantum Intelligenceの4社がそれぞれ新しい役員やアドバイザーの就任を発表しました。
次に技術系の話題を2本です。量子コンピュータのクラウドをAIに作らせたら3分37秒だった―誰でも作れます、量子コンピュータを外部の人に使わせるための仕組みを生成AIに作らせたところ、3分37秒、354行のプログラムで動いたという内容です。IBM、トランスパイル時にシステム構造を保持するオープンソースのQiskit Fermions 0.1.0をリリース、IBMが電子などの粒子を扱う計算専用のオープンソースツール「Qiskit Fermions」を公開しました。
最後に資金関連を1本です。iAccess PartnersとQAI Ventures、初期段階量子ベンチャーキャピタルファンドの投資参入障壁引き下げに向けて提携、スイスのiAccess Partnersと量子ベンチャーキャピタルのQAI Venturesが提携し、量子技術への早期投資の最低額を2万5000米ドルまで引き下げました。
以上5本です。この中から今日は、Who's Newsの人事、iAccess PartnersとQAI Venturesの提携、IBMのQiskit Fermionsの3本を詳しく見ていきます。まずはWho's Newsの人事から入ります。
Who's News: Quantum Sky、IonQ、Pasqal、Global Quantum Intelligenceにおける戦略的人事任命です。Quantum SkyはSean Thompson氏をChief Growth Officerに任命。IonQは取締役会にEric Ball氏とTimothy Baxter氏の2名を追加。Pasqalは2022年ノーベル物理学賞受賞者Alain Aspect氏を議長とする9名の取締役会を発表しました。GQIも3名のシニアアドバイザーを加えています。
久保田さん、4社まとめての発表ですが、この中でまず注目したのはどの人事でしょうか。
注目したのはPasqalの取締役会です。Nasdaqへの上場に伴う体制固めで、Alain Aspect氏という研究の顔と、SoftBank出身のMichel Combes氏という経営の顔を並べています。ここで変わるのは、上場企業として外部の目に晒される体制が整った、という点です。IonQも製造統合を支える人選で、こちらは事業運営の強化という意味合いが強いです。ただ、この4社の発表に共通して、まだ示されていないのは、新任者が具体的にどの計画をいつまでに動かすかです。人事はあくまで体制づくりで、次に注目すべきは、この体制が実際の製品や量産計画にどう反映されるかだと思います。
「外部の目に晒される」というのは、株式を公開した会社として一般の投資家からも経営を見られる立場になった、という意味ですね。つまり、Pasqalは上場に合わせて研究と経営の両方の顔を取締役会に揃え、IonQは製造面を固める人選をした、ということですね。
iAccess PartnersとQAI Ventures、初期段階量子ベンチャーキャピタルファンドの投資参入障壁引き下げに向けて提携です。スイスのiAccess Partnersと、量子技術専門のベンチャーキャピタルQAI Venturesが提携しました。銀行で取引できるISIN、つまり証券に付く識別番号を使うことで、量子技術の早期投資に必要な最低金額を2万5000米ドルまで引き下げました。資金は量子プロセッサーや量子センサーなどの初期段階スタートアップに投じられます。
久保田さん、この最低投資額の引き下げは、これまでと比べてどれくらい大きな変化なのでしょうか。
機関投資家とは、年金基金や保険会社のような大きな資金を運用する組織を指します。つまり、これまで大口の組織に限られていた量子スタートアップへの投資が、2万5000米ドルから個人でも可能になったということですね。
続いてIBM、トランスパイル時にシステム構造を保持するオープンソースのQiskit Fermions 0.1.0をリリースです。トランスパイルとは、量子コンピュータが実行できる命令に計算手順を変換する作業のことです。IBMは電子など特定の粒子の演算子を扱う新ツール「Qiskit Fermions」バージョン0.1.0を公開しました。1次元のFermi-Hubbardモデルという格子上の電子の動きを計算する例で、2量子ビットゲートの深さが4サイトから100サイトまで12のまま一定を保ち、従来手法では100サイトで407まで増えるとしています。
久保田さん、この「深さが一定に保たれる」という点は、実際の計算のどんな場面で効いてくるのでしょうか。
深さが一定というのは、こういう意味です。システムを大きくしても、計算の待ち時間や誤りの蓄積が増えないということです。従来の変換方式では、格子のサイズが増えるほど回路が深くなります。実機では誤りが積み重なりやすくなります。今回の数値は、Fermi-Hubbardモデルという特定の物理モデルでの結果です。化学計算など他の問題でも同じ効果が出るかは、まだ示されていません。実機で誤り率まで含めた検証が出れば、次の判断材料になります。
「回路が深くなる」というのは、計算の手順が増えて途中でミスが起きやすくなるという意味です。つまり、今回の一定深さという結果はFermi-Hubbardモデルという特定の物理モデルでの成果であり、化学計算など他の問題でも同じ効果が出るかはまだ分からない、ということですね。
今日の3本を並べても、一つの流れには無理にまとめられません。人事は体制固め、投資の話は個人投資家への間口拡大、IBMの話は計算手法の改善です。それぞれ別の動きです。共通するのは、どれもまだ次の裏付けが出ていない段階だという点です。次に見るべきは、Pasqalの新体制が実際の計画にどう反映されるか、あるいはQiskit Fermionsが実機でどこまで通用するかだと思います。
最後に米国市場の終値です。8月28日、量子関連10銘柄のうち上昇は1、下落は9でした。平均はマイナス5.71%です。上げたのはXanaduのみで、プラス1.25%。下落幅が最も大きかったのはInfleqtionで、マイナス10.61%でした。
体制も投資額も計算手法も、それぞれ次の裏付けが出るかが鍵というお話でした。明日の夜も、この時間にお会いしましょう。

