9月13日、夜のニュースコーナー「クオンタムビュー」をお届けします。今日は量子コンピュータ関連のニュースが4本入ってきました。まず4本をざっとご紹介して、そのあと気になったものを詳しく見ていく流れです。どうぞ最後までお付き合いください。
今日入ってきた4本をまとめてご紹介します。まず、光の量子コンピュータを1枚のチップに載せて1万個を超える光子の検出を実現したという記事が1万光子を超えるチップスケール時空間多重ガウスボソンサンプリングプロセッサです。次に、欧州の研究ネットワークと量子インターネットの連合が協定を結んだというGÉANTとQuantum Internet Alliance、欧州量子ネットワーキングアーキテクチャ推進で提携という記事があります。そして、異なる2種類の原子を組み合わせて量子ゲートの精度を高めた87Rb-171Ybリュードベリ原子間の交換支援型エンタングリングゲートという記事です。この3本を詳しく見ていきます。残る1本はスピン量子ビットの解説記事スピン量子ビットとは?です。では1本目です。
1本目はこちらの記事です。1万光子を超えるチップスケール時空間多重ガウスボソンサンプリングプロセッサ。薄膜ニオブ酸リチウムという材料を使い、1枚のチップに光を操作する装置を一体に作り込みました。毎秒40億回の高速クロックで動作し、1ミリ秒の間に最大で1万1059個の光子の検出を達成したそうです。さらに、このチップが物理現象の予測でも古典的な機械学習より良い結果を出したと報告されています。久保田さん、このチップの登場で何が変わるのでしょうか。
まず、これまでガウスボソンサンプリングの実験は机を埋め尽くすような大型の光学装置が必要で、調整も難しく、結果が安定しないという問題がありました。今回のチップはそれを1枚に収めて、しかも高速で安定して動くことを示した点が大きいです。実験室の装置ではなく、工場で量産できる形に一歩近づいたと言えます。ただ、まだ示されていないのは、このチップを複数つないでさらに大きな計算ができるかどうかです。次に、チップ同士を光で接続して規模を拡張した実証が出れば、この方式が本命になると言えるでしょう。
久保田さんの話で「ガウスボソンサンプリング」という言葉が出てきました。これは、光の粒を回路に通して、その出てくる並び方の統計を取ることで、普通のコンピュータでは解くのが難しい問題を扱う手法のことです。つまり、大型で不安定だった装置が、小さくて安定したチップに置き換わる一歩が示された、ということですね。
2本目です。GÉANTとQuantum Internet Alliance、欧州量子ネットワーキングアーキテクチャ推進で提携。欧州の研究ネットワークを運営するGÉANTと、量子インターネットの研究連合であるQuantum Internet Allianceが、2026年9月8日に覚書を結びました。実験室段階だった量子通信を、国境を越えた実際のネットワークで試験できる環境を整えるのが目的です。久保田さん、この提携が量子ネットワークの開発にどう影響するのでしょうか。
量子ネットワークは、これまで個々の大学や研究所が自分の実験室の中で試す段階でした。今回の提携は、それを欧州全体の光ファイバー網につないで、実際の通信環境で試せるようにするという点で大きな前進です。特に、異なる国のネットワークをまたいで量子もつれを配れるかを実証する場ができるのが重要です。ただ、まだ示されていないのは、この試験環境で実際にどれだけの距離と速度で量子通信が安定して動くかというデータです。次に、国境を越えた実証実験の結果が報告されれば、量子インターネットの実用化に向けた具体的な一歩になるでしょう。
「量子もつれ」という言葉が出てきましたね。これは、離れた場所にある粒子同士が特別な関係を持ち、片方の状態を見るともう片方の状態も瞬時に決まるという量子力学の性質のことです。つまり、実験室の中だけであった量子通信の試験を、欧州の実際のネットワーク上で試す土台ができた、ということですね。
3本目です。87Rb-171Ybリュードベリ原子間の交換支援型エンタングリングゲート。ルビジウムとイッテルビウムという異なる2種類の原子を並べ、その間で量子もつれを作るゲート操作を実証しました。動作時間は0.36マイクロ秒と非常に短く、理想的な条件では99.91%、ノイズがある条件でも99.85%以上の精度を達成したそうです。久保田さん、この異なる原子同士のゲートは、量子コンピュータの開発にどう役立つのでしょうか。
量子コンピュータでは、計算を記憶しておく量子ビットと、実際に操作を行う量子ビットを別々に用意できると設計の幅が広がります。今回の成果は、長寿命のイッテルビウムを記憶用に、高速に制御できるルビジウムを操作用に、という役割分担が可能であることを示しました。さらに、これまで異種原子間のゲートを妨げていた電気的なノイズの問題を、フェルスター共鳴という仕組みで回避した点が技術的な要点です。ただ、まだ示されていないのは、このゲートを実際に大規模な計算に組み込んだ時の性能です。次に、この方式で数十個以上の原子を動かして計算を行う実証が出れば、ハイブリッド型量子プロセッサの実現が現実味を帯びるでしょう。
「フェルスター共鳴」という言葉が出てきました。これは、2つの原子のエネルギー準位がちょうど一致した時、原子同士の間に強い相互作用が生まれる現象のことです。つまり、異なる種類の原子を役割分担させて使うための、妨げとなる問題を回避する手法が示された、ということですね。
今日の3本を並べてみると、チップの小型化、ネットワークの実用化、異種原子のゲートと、それぞれ別の層の進歩です。まだ1つに統合されたわけではなく、ばらばらの前進だと見るのが正確です。ただ、共通しているのは、どれも実験室の枠を出て、実際のシステムに組み込むための一歩であることです。次に見ておくべきは、これらの技術が互いにつながるかどうか、特にチップ間を光で接続する実証が出てくるかどうかだと思います。
今日の米国市場です。9月11日終値で、10銘柄のうち上昇が6、下落が4、変わらずは0でした。平均はマイナス0.17%です。いちばん上げたのはQuantum Computing Incでプラス2.17%、いちばん下げたのはXanaduでマイナス4.01%でした。
量子技術が実験室を出て、実際のシステムに組み込まれる段階に来ている、という久保田さんのお話でした。明日の夜もこの時間に、またお会いしましょう。



