中国のファーウェイ(華為技術)が2026年9月17日、上海で開いた自社イベント「HUAWEI CONNECT 2026」で、AI向け半導体「Ascend(昇騰)960」系列の投入時期を前倒しすると示したと報じられています。会期は9月17日から19日、登壇したのは輪番会長の汪涛(Wang Tao)氏です。
⚠️ この9月17日の内容について、ファーウェイ自身の発表ページは本稿の時点で公開されていません。そこで本記事では、ファーウェイが1年前に自ら公開した工程表を基準に、何がどれだけ動いたのかを確かめます。
ファーウェイが自ら公開している工程表(2025年9月)
以下は、2025年9月のHUAWEI CONNECTでファーウェイが公開した資料に書かれている内容です。同社自身の数字です。
| 製品 | 公開されていた投入時期 | 用途 |
|---|---|---|
| Ascend 950PR | 2026年 第1四半期 | 推論の前処理、レコメンド |
| Ascend 950DT | 2026年 第4四半期 | 推論の生成段階、学習 |
| Ascend 960 | 2027年 第4四半期 | — |
| Ascend 970 | 2028年 第4四半期 | — |
950DTについては、具体的な値も公開されています。
- メモリ 144GB、メモリ帯域 4TB/s(自社開発のHBM「HiZQ 2.0」)
- 相互接続の帯域 合計 2TB/s
- 演算 1 PFLOPS(FP8・MXFP8・HiF8)、2 PFLOPS(MXFP4)
Ascend 960については「950に対して、演算性能・メモリ帯域・メモリ容量・相互接続ポート数がいずれも2倍」とだけ書かれ、個別の値は示されていませんでした。
報じられている変更点
各社の報道によれば、9月17日に示されたのは次の内容です。
| 製品 | 元の予定 | 今回示されたとされる時期 | 差 |
|---|---|---|---|
| Ascend 960DT(学習向け) | (960として)2027年 第4四半期 | 2027年 第1四半期 | 3四半期 前倒し |
| Ascend 960PR(推論向け) | 同上 | 2027年 第3四半期 | 1四半期 前倒し |
⭐ 注目すべきは、前倒しそのものより「1つだった製品が2つに割れた」ことだと思います。2025年の工程表では「Ascend 960」は1製品でした。それが、950系列と同じように推論向け(PR)と学習向け(DT)の2本立てになっています。用途ごとに設計を分ける方針が、960世代にも引き継がれた形です。
その先については、Ascend 970が2028年、Ascend 980が2029年と、1年に1世代の歩みを保つとされています。
システムの側の数字
ファーウェイは単体の半導体だけでなく、多数をつないだ「超節点(SuperPoD)」という単位でも数字を出しています。これも2025年9月に同社が公開したものです。
| Atlas 950 SuperPoD | Atlas 960 SuperPoD | |
|---|---|---|
| 搭載する半導体 | Ascend 950DT 8,192個 | Ascend 960 15,488個 |
| 演算(FP8) | 8 EFLOPS | 30 EFLOPS |
| 演算(FP4) | 16 EFLOPS | 60 EFLOPS |
| メモリ | 1,152 TB | 4,460 TB |
| 相互接続の帯域 | 16 PB/s | 34 PB/s |
| 投入時期 | 2026年 第4四半期 | 2027年 第4四半期 |
⚠️ 1万5,488個という数は、単体の性能で劣る分を数でまかなう設計と読めます。ファーウェイは米国の輸出規制下にあり、最先端の製造技術を使えません。その制約のもとで大きな計算能力を出す道として、個数と接続に寄せているという筋書きは、これらの数字と整合します。
⛔ 言えないこと
- 9月17日の発表そのものの一次資料。ファーウェイの報道発表ページには、本稿の時点で該当の記事がありません。上の「報じられている変更点」は各社の報道によるもので、当サイトは同社の資料で確認できていません
- 実際の性能。上の数値はすべてファーウェイの公表値で、第三者が測ったものではありません。当サイトも実機に触れていません
- NVIDIA製品との優劣。同じ条件で測った比較データが存在しないため、本記事では並べません。⚠️ EFLOPS の数字は構成も精度も測り方も違うので、そのまま突き合わせると誤った印象になります
- 本当に作れるのか。半導体を計画通りに量産できるかは製造側の問題で、工程表からは分かりません
- Ascend 960PR / 960DT の個別の値。メモリ容量も帯域も、まだ公開されていません
どう見るか
工程表が1年で書き換わったこと自体が、いちばん確かな情報だと思います。2025年9月に「2027年第4四半期」と自ら書いたものを、1年後に「2027年第1四半期」と言い直したのであれば、その差は3四半期です。⭐ 同社が過去に公開した数字が残っているからこそ、前倒しの幅を推測ではなく引き算で言えます。
一方で、これは予定の話です。2026年第4四半期に出るとされているAscend 950DTがまず予定通りに出るかどうかが、この工程表全体の信頼性を測る最初の目盛りになります。そこを見てから、2027年の話を評価するのが順序だと思います。
2025年9月の工程表はファーウェイの発表資料で読めます。HUAWEI CONNECT 2026の案内はこちらです。数値は2026年9月17日に確認しました。




