NVIDIAは2026年10月1日、AIファクトリーの収益性を最大化する設計思想を発表しました。同社によると、AIファクトリーはメガワット単位、さらにはギガワット単位で建設され、各メガワットの工場は約6000万ドルの費用がかかります。そのため、運営者は投資対効果を明確に見通せた場合にのみ資本を投入すると言います。
AIファクトリーの収益を決める3要素
NVIDIAの発表によると、AIファクトリーの収益は3つの要素で決まります。1つ目は「稼得能力」で、工場が生産できるすべてのトークンを1年間で販売した場合に得られる収益。2つ目は「耐用年数」で、AIハードウェアが収益を生み続ける期間。3つ目は「需要」で、それらのトークンに対する市場の需要量です。
同社は、ある要素の強みが他の要素の弱みを完全に補うことはできないと説明します。例えば、高い稼得能力も、工場が生産可能な量の一部しか販売できなければ価値は小さいです。また、高い需要があっても、わずか1年でフル生産を停止するようでは意味がありません。さらに、3つの要素は独立しておらず、より多くの種類のワークロードを実行できる工場は需要を見つけやすく、年々収益を上げ続けることができるとしています。
生産性——メガワットあたりのスループットとトークンコスト
NVIDIAによると、電力はAIファクトリーの制約条件となります。このため、メガワットあたりのトークン数(1秒あたり)が稼得能力を左右し、固定された電力範囲内でより多くのトークンを生成できれば収益が増え、トークンあたりのコストが下がれば利益率が高まります。
同社が引用するSemiAnalysisのAgentXデータでは、NVIDIAのVera Rubin NVL72システムは、GB300 NVL72と比べてメガワットあたり30倍以上のスループットを実現し、DeepSeek V4 Proモデルにおいてトークン100万個あたりのコストを最大45倍低減できると言います。この改善は、モデルやワークロードからソフトウェア、コンピューティング、ネットワーク、メモリまでを一体最適化する「コードザイン」によるものだとしています。
同社は、世代ごとにトークンのコストが下がれば、コンピューティングへの需要は縮小するのではなく拡大すると主張します。安価なトークンはより多くのユースケースを経済的に成り立たせ、そのユースケースが効率化で節約された分以上のトークンを消費するためです。
耐久性——既存ハードウェアの稼働期間
すべてのワークロードが最新システムを必要とするわけではありません。NVIDIAは、ワークロードの複雑さや形状に応じて適切なシステムが選ばれるため、前世代のシステムは次世代の登場後も収益を生み続けると説明します。
同社によると、2020年に出荷されたA100 GPUは、6年後の現在も商用サービスで使用され続けており、CoreWeaveは2020年に導入したユニットの予約を2029年まで延長しました。NVIDIAは主要な運営事業者がサーバーの減価償却スケジュールを延長していると述べており、Sproutの2026年9月の分析はその推移を追跡しています。
さらに、Barkrの分析では、8基のGPUを搭載したH100システムの耐用年数は5〜6年、GB300 NVL72は9〜10年とされます。Silicon Dataによると、6年前のA100 GPUは取得原価の4分の1の価値が残っており、5年の減価償却スケジュールでは1年以上前にゼロになっていたはずだとしています。Ornn Dataは、A100 GPUの5年契約レンタル料金が1ヶ月契約の80%で取引されているとしています。
NVIDIAのGPUをプログラムするソフトウェア基盤「CUDA」は世代をまたいで動作するため、新しいアーキテクチャが登場しても既存の設備が無駄になることはありません。継続的なソフトウェアとカーネルの最適化により、既存ハードウェアの性能も向上し続けると言います。
代替可能性——多様なワークロード
NVIDIA AIファクトリーは、言語、視覚、生物学、物理学、ロボティクスなど、あらゆる種類のAIモデル(オープンおよびプロプライエタリ)を実行できます。データ処理から事前学習、事後学習、推論まで全フェーズをカバーし、ハイパースケールやAIクラウド、各国の主権プログラム、エンタープライズデータセンター、エッジまで、あらゆる場所で動作します。
AI以外のワークロードも含め、これらはすべて同じ並列数学に帰着し、NVIDIA GPUは数千のコアでそれを実行するように設計されています。CUDAは1つのチップで光のシミュレーション、タンパク質の折りたたみ、次のトークンの予測を可能にします。1000以上のCUDA-Xライブラリが深層ニューラルネットワーク、計算リソグラフィ、量子回路シミュレーション、ベクトル検索、気候モデリングなどをカバーし、1000万人以上の開発者がこれらを基に開発しています。
顧客事例として、以下のような企業が挙げられています。
- Lilly: 自社構内の1016基のGPUクラスターでタンパク質、低分子、ゲノムモデルを構築・実行。社内向けチャットボットやエージェント型ワークフローも展開
- Pinterest: ハイパースケールクラウド上で14000基のGPU(Blackwell、Hopper、旧アーキテクチャ)を使用し、視覚言語モデルの事後学習とデプロイを実施
- Revolut: NVIDIA cuDFで数十億件の取引レコードを処理し、AIクラウド上で基盤モデルを学習・デプロイ
- Runway: Hopperでワールドモデルを学習し、Blackwellプラットフォームでクラウドインフラを使用して推論を提供
- Texas A&M大学: スーパーコンピュータで分子シミュレーションとAI創薬を実行。26プロジェクト、7機関にわたり95〜98%の稼働率
AI以外では、Cosmが分散型NVIDIA搭載データセンターで高解像度ビデオ再生、ストリーミング、リアルタイムグラフィックス、同期表示を提供します。Dassault Systèmesはウィチタ州立大学の航空機認証やLucid Motorsの車両設計を支える仮想双生児シミュレーションを提供します。Unileverはデジタル双生児から製品画像を生成し、制作コストを半減しています。
どう見るか
今回の発表では、NVIDIAのAIファクトリー設計思想(生産性・耐久性・代替可能性)と、Vera Rubin NVL72の性能データが示されました。性能比較はSemiAnalysisのデータに基づいており、NVIDIA自身の測定結果ではない点に注意が必要です。耐久性については、Barkr、Silicon Data、Ornn Dataなどの第三者分析が引用されていますが、いずれもNVIDIAのブログ記事内での紹介であり、独立した検証結果が公開されているわけではありません。
一方で、Vera Rubin NVL72の具体的な価格や提供時期は明らかにされていません。また、NVIDIAのファウンダー兼CEOであるジェンスン・フアン氏は、10月21日午前11時(中央ヨーロッパ夏時間)にGTCベルリンで基調講演を行う予定で、そこでAIファクトリーに関する詳細が説明されるとみられますが、今回の資料からはその内容は不明です。




