10月9日、夜のニュースコーナー「クオンタムビュー」をお届けします。今日は量子コンピュータ関連のニュースが10本入ってきました。まず全部を簡単にご紹介して、そのあと気になったものを詳しく見ていきますね。
量子コンピューティング革新の特許 – 第5部:Shorのアルゴリズムと結論が公開されました。
米国エネルギー省(DOE)、フォールトトレラントな科学的実用性を導くQuantum Genesis Priority Applicationsを公開しました。
米国エネルギー省、量子誤り訂正と材料コデザインのためのフェーズII Genesis Mission賞として1億5,900万ドルを配分しました。
NVIDIA、米国の科学計算および量子インフラストラクチャを加速するため今後5年間で10億ドルをコミットしました。
PsiQuantum、米国戦略資本室から最大1億5,000万ドルの条件付き融資コミットメントを確保しました。
米国国防総省、PsiQuantum向け1億5,000万ドルのOSC融資コミットメントを柱とする3億5,000万ドルの量子技術パッケージを発表しました。
インドのMeitY、IIT Madrasとの連携が発表されました。
Quantum Source、マルチモーダル量子コンピューティングを統合するメモリ支援型フォトニックインターコネクトを発表しました。
Universal Quantum、モジュール式捕捉イオンアーキテクチャのスケーリングを加速するためシリーズAで1億ドルを調達しました。
中性原子開発企業Oratomic、フォールトトレラントなシステム研究開発のため累計7億7,500万ドルを調達しました。
詳しく見ていく3本は、1本目がNVIDIA、米国の科学計算および量子インフラストラクチャを加速するため今後5年間で10億ドルをコミット、2本目が米国国防総省、PsiQuantum向け1億5,000万ドルのOSC融資コミットメントを柱とする3億5,000万ドルの量子技術パッケージを発表、3本目がUniversal Quantum、モジュール式捕捉イオンアーキテクチャのスケーリングを加速するためシリーズAで1億ドルを調達です。それでは1本目からお伝えします。
NVIDIAは今後5年間で10億ドルを投じ、米国の科学研究と量子技術開発を支援すると発表しました。これは2026年10月8日に発表されました。国立研究所向けのスーパーコンピュータ構築と、量子コンピュータ向けソフトウェア「CUDA-Q」の拡張が含まれます(NVIDIA、米国の科学計算および量子インフラストラクチャを加速するため今後5年間で10億ドルをコミット)。久保田さん、この10億ドルという規模は、業界の何を動かすのでしょうか。
NVIDIAの発表で変わるのは、量子コンピュータの開発現場が使える計算資源の規模です。CUDA-Qというソフトウェアは、量子コンピュータの動作を通常のコンピュータで模擬試験するためのものです。これが国立研究所に広がれば、実際の量子コンピュータを待たずに、誤り訂正の仕組みを大規模に試せるようになります。まだ示されていないのは、10億ドルのうち実際にどれだけが現金で、どれだけがGPUなどの現物提供なのかという内訳です。次に、具体的な配分の数字が出てくれば、どの研究所にどれだけの計算力が入るのかが見えてきます。
「誤り訂正」という言葉を噛み砕くと、量子コンピュータはとてもエラーを起こしやすいので、そのエラーを自動で直す仕組みのことです。つまり、NVIDIAの発表は、量子コンピュータ本体が完成する前に、その動きを模擬試験する環境を国全体に整える、ということですね。では2本目です。
米国国防総省は、国家安全保障向けの量子技術開発を加速するため、総額3億5,000万ドルのイニシアチブを発表しました。この中には、PsiQuantumへの最大1億5,000万ドルの条件付き融資と、DARPAのQBIステージCへの約2億ドルの資金配分が含まれます(米国国防総省、PsiQuantum向け1億5,000万ドルのOSC融資コミットメントを柱とする3億5,000万ドルの量子技術パッケージを発表)。久保田さん、国防総省がここまで量子に資金を出す意味は何でしょうか。
この発表で変わるのは、PsiQuantumの製造拠点が実際に拡張できることです。融資の対象はカリフォルニア州ミルピタスの工場で、ここで量子コンピュータの部品を試作・試験します。国防総省が資金を出すことで、量子コンピュータを輸出ではなく国内で作る体制を整えようとしています。まだ示されていないのは、この融資が実行されるための条件の詳細です。次に、PsiQuantumがこの資金で具体的にどの部品を量産するのかが明らかになれば、実用化への道筋が見えてきます。
「条件付き融資」というのは、企業が決められた条件を満たせば借りられるお金のことです。つまり、国防総省が量子コンピュータの部品を国内で作るための工場拡張を、融資という形で後押しする、ということですね。では3本目です。
英国の量子コンピュータ企業Universal Quantumが、シリーズAで1億ドル以上を調達しました。これは英国の量子企業によるシリーズAとしては最大規模です。資金はシンガポールや米国、日本などへの国際展開に使われます(Universal Quantum、モジュール式捕捉イオンアーキテクチャのスケーリングを加速するためシリーズAで1億ドルを調達)。久保田さん、この資金調達の意味をどう見ますか。
この調達で変わるのは、Universal Quantumの技術が国際的に広がる土台ができたことです。同社はイオントラップ方式という、電気を帯びた粒子を電磁石で捕まえて計算に使う方式を採用しています。特徴は、複数の小さなチップを電場でつないで、量子ビットを物理的に運ぶ点です。まだ示されていないのは、この方式でどこまでチップの数を増やせるかという実証データです。次に、ドイツ航空宇宙センターとの契約で建設中のマルチチップ機が、計画どおり動くかどうかが決定的な材料になります。
「イオントラップ方式」というのは、電気を帯びた小さな粒子を電磁石で空中に捕まえて、その粒子の状態で計算する方法のことです。つまり、Universal Quantumは、複数のチップを電場でつないで大きくする方式で、1億ドルを調達して国際展開を進める、ということですね。
今日の3本を並べて見ると、共通しているのは「量子コンピュータ本体を作る」段階から「それを実際に動かす環境や工場を整える」段階に移ってきたことです。NVIDIAは計算環境を、国防総省は製造拠点を、Universal Quantumは国際展開の資金をそれぞれ用意しました。ただ、3本は別々の企業と組織の話なので、ひとつの流れにまとめるのは無理があります。次に見ておくべきは、PsiQuantumの融資が実際に実行されるかどうかです。それが決まれば、政府の資金がどこまで量子産業に入るかの目安になります。
今日の米国市場です。2026年10月8日の終値で、10銘柄のうち上昇1、下落9、変わらず0でした。平均は-5.24%です。いちばん上げたのはHorizon Quantumで+0.99%、いちばん下げたのはArqitで-18.27%でした。
久保田さんがおっしゃったように、量子コンピュータは「作る」段階から「動かす環境を整える」段階に来ているのですね。明日の夜もこの時間に、最新の量子ニュースをお届けします。おやすみなさい。



