blueqat news
量子コンピュータ関連銘柄 更新: 10/12 14:15(日本時間)
%は前日比・グラフは直近10営業日の推移 — 株価とニュースの突き合わせ / 業界の関係図
入門

【入門】物理量子ビットと論理量子ビットの違いとは?数字のマジックを読み解く

要約

物理量子ビットと論理量子ビットの違いを解説します。装置内の実部品数と、量子誤り訂正で束ねた信頼性の高い計算単位の違い、シンドローム測定やデコーダーの役割、実際の研究事例から数字の読み方が分かります。

「うちの量子コンピュータは1000量子ビットです」と聞くと、すごい性能だと思うかもしれません。でも別の記事では「論理量子ビットは50個」と書かれていたりします。同じ量子ビットなのに、なぜ数字がこんなに違うのでしょうか。実はこの2つ、まったく違うものを数えています。この違いが分からないと、量子コンピュータのニュースを正しく読めません。今回はこの謎を解きます。

まず物理量子ビットとは何でしょうか。これは、実際に装置の中にある量子ビットそのものを指します。超伝導回路やイオントラップなど、方式は色々ありますが、とにかく1個1個が「本物の部品」です。ところがこの物理量子ビットは非常にデリケートで、周りのわずかな振動や温度変化ですぐに情報が壊れてしまいます。たとえるなら、ろうそくの炎のようなものです。ちょっとした風でもすぐ消えてしまう、そんな頼りない存在です。

そこで登場するのが「量子誤り訂正」という技術です。これは、複数の物理量子ビットを束ねて、1つの安定した量子ビットを作る仕組みです。この束ねられた結果できる、信頼性の高い量子ビットを「論理量子ビット」と呼びます。ろうそくの炎に例えるなら、何十本もの炎を集めて、多少の風が吹いても消えない大きな炎にするようなイメージです。ただし現実の炎とは違い、量子誤り訂正には巧妙な数学的な仕組みが使われています。

量子誤り訂正の基本は、量子ビットの状態を直接見るのではなく「シンドローム測定」と呼ばれる情報を集めることです。これは、どこにどんな誤りが起きたかを間接的に示す手がかりのようなものです。この手がかりをもとに、誤りの場所と種類を推定して直す装置が「デコーダー」です。デコーダーには厳しい時間制限があり、たいてい100万分の1秒ほどの間に処理を終える必要があります。処理が遅れると、直すべき誤りがどんどん溜まってしまい、訂正そのものが破綻してしまうからです。

この時間との戦いに、多くの研究チームが挑んでいます。「THQLink」という仕組みは、スーパーコンピュータのような大規模計算基盤を使っています。この基盤により、リアルタイムに誤り訂正を行う方法を示しました。往復の遅延を平均2.944マイクロ秒に抑えました。符号距離19という比較的大規模な設定でも、1マイクロ秒周期の処理を実証しています。符号距離とは、誤りへの強さを表す指標です。数字が大きいほど、より多くの物理量子ビットを使って高い信頼性を持たせていることになります。

似た課題に別の角度から挑んだのが「Zero-G」というデコーダです。単純な誤りを先に片づける「プリデコーダ」と組み合わせることを前提に設計しました。その上で、既存の強力なデコーダと同じ精度を保ちながら処理時間を10倍改善しました。128コアのCPU1台で640個の論理量子ビットを処理できるという結果も示されています。この数字からも分かることがあります。論理量子ビットの数は、物理量子ビットをどれだけ効率よく束ねられるかに大きく左右されるのです。

ここで最初の疑問に戻りましょう。ニュースで見る「◯◯量子ビット」という数字は、どちらを指しているのでしょうか。答えは「記事による」としか言えません。ただし目安はあります。「プロセッサの量子ビット数」として大きな数字が出てくる場合、それはたいてい物理量子ビットです。一方、「誤り訂正された」「フォールトトレラントな」といった言葉が添えられている場合もあります。この場合は、論理量子ビットを指していることが多いです。

実際の業界動向でも、この区別ははっきり意識されています。例えばQuantinuumの「Helios」を巡る動きがあります。ここでは98量子ビットのイオントラップ型プロセッサが使われています。そこでは、物理量子ビットと論理量子ビットの両方を使ったベンチマークが行われています。物理的なハードウェアの規模と、誤り訂正後に実際に使える計算資源とを、分けて評価する姿勢がうかがえます。またモジュール同士をつないで大きな装置を作る「モジュラー方式」の研究もあります。そこでは接続部分のノイズ許容度を調べた成果が示されています。この成果により、複数のチップをまたいで論理量子ビットを作る際の指針が得られています。

さらに面白いのは、論理量子ビットという考え方が、実機がなくても計算機の上でシミュレーションできる点です。OTI LumionicsとSamsung Advanced Institute of Technologyの研究が行われました。この研究では、単一のCPU上で200個を超える論理量子ビットの動きを再現しました。これにより、実在の物理量子プロセッサが将来目指すべき目標を示しました。これは、論理量子ビットが単なる部品の数ではないことを示しています。「どれだけ信頼できる計算ができるか」を表す指標であることをよく表しています。

まとめると、物理量子ビットは装置の中にある実際の部品の数です。論理量子ビットは、誤り訂正によって安定させた実用上の計算単位の数です。ニュースの数字を見たら、まずどちらの話をしているのか確かめる習慣をつけましょう。次回は、ここまで見てきたゲート方式とは仕組みの違う「量子アニーリング方式」を取り上げます。2つは何が違い、それぞれ何に向いているのかを並べて見ていきます。

続きはメールでも受け取れます

新着記事のまとめを、毎日・週1回・月1回から選んでお届けします。 対談と教えて先生の続きも読めるようになります。登録も閲覧も無料です。

ログインしてメール配信を設定