Stability AIは2026年8月25日、シリーズBで7,600万ドルを調達したと発表しました。発表はロサンゼルス発で、署名はLouisa Marshallとなっています。金額も投資家の顔ぶれも、同社が自ら公表したものです。第三者が確かめたものではありません。同社によると、資金はクリエイティブ制作向けの製品群の開発、応用研究の強化、専門サービス部門の拡大に充てられます。
同社は累計調達額を2億3,200万ドルとしています。ただし、この数字の中身には注意が必要です。同社の説明では、この累計は2回のエクイティラウンドと転換社債を含むものです。さらに、Prem Akkaraju氏が2024年6月にCEOに就任して以降の数字とされています。つまり創業からの総額ではありません。
今回の発表で目を引くのは、投資家の顔ぶれです。今回加わった投資家として、Electronic Arts、Sony Music Group、Universal Music Group、Warner Music Groupの名前が並んでいます。大手音楽3社が同じラウンドに入った形です。このほかにAMD VenturesとPacific Alliance Venturesも新たに参加しています。同社は、Electronic Arts、Universal Music Group、Warner Music Groupについて、もともと事業上の提携先でもあると書いています。
前回に続いて2回目の出資をしたのは、Coatue、Greycroft、Kadmos Capital、Sean Parker氏、Eric Schmidt氏です。既存の投資家には、このほかLightspeed Venture Partners、Mantis Capital、Sound Ventures、WPPが挙げられています。個人ではJames Cameron氏、Kevin Mayer氏、Mark Burnett氏、Patrick Whitesell氏、Prem Akkaraju氏、Reuben Brothers、Robert Nelsen氏、Vivi Nevo氏の名前が並びます。WPPについて同社は、新体制以降ずっと提携先かつ投資家だと書いています。
もう一つ、事実として並べておきたい点があります。今回の発表は、Stable Audio 3.0の公開の直後にあたります。Stable Audio 3.0について同社は、完全にライセンスされたデータで学習した、重みを公開している音楽モデル群だと説明しています。DAW(音楽制作ソフト)のプラグイン、またはStableAudio.comから使えるとしています。権利者側にあたるレーベル3社が出資に回ったこと、そして学習データはライセンス済みだと会社が説明していること。この2つが同じ時期に並んでいる、というのが今回公表された内容です。ライセンスの中身については、後述のとおり公表されていません。
取締役会にも変更があります。Coatue共同創業者のThomas Laffont氏が取締役に就任しました。発表時点の取締役会の顔ぶれは、映画監督のJames Cameron氏、Facebook元社長のSean Parker氏、Greycroft共同創業者・マネージングパートナーのDana Settle氏、CEOでWeta Digitalの元CEOであるPrem Akkaraju氏、そしてThomas Laffont氏です。Akkaraju氏は発表の中で、Stability AIがAIの分野で独特なのは、自分たち自身がものを作る側の人間であり、作る人のための道具を作っているからだ、と述べています。Laffont氏は、ほかが汎用のAIを作っているなかで、Stability AIは制作のための道具を作っており、しかもそれを、この分野を形づくってきたアーティストやスタジオ、権利者と一緒に進めている、と述べています。
一方で、公表されていないことも多くあります。企業価値は明らかにされていません。各投資家の出資額や持ち分も出ていません。このラウンドのリード投資家が誰かも書かれていません。Stable Audio 3.0のライセンス契約の相手や条件も公表されていません。売上や利用者数といった業績の数字もありません。読者が判断できるのは、以上の公表分に限られます。本記事は2026年8月26日時点で確認した内容にもとづきます。
企業が自ら公表した調達額をどう読むかについては、AnthropicとOpenAIが自ら公表した数字――調達額とギガワット単位の計算資源も合わせてご覧ください。重みを公開する側の動きについてはOrnith-1.5が公開、9B・35B・397Bの3種をMITライセンスで配布、業界全体の直近の動きについてはオープンモデル乱立とエージェント特化競争――AI業界、8月後半の動きで扱っています。



