Ornith Teamは2026年8月、大規模言語モデル「Ornith-1.5」を公開しました。同チームの発表ページによると、狙いはコーディングとエージェント用途です。エージェントとは、モデルが道具を呼び出しながら作業を進める使い方を指します。3つの大きさが用意され、ライセンスはMITです。自分の環境にモデルを置いて動かしたい開発者や、社内でコード生成を試したい技術者が主な対象になります。
大きさは3種類です。397B MoE、35B MoE(配布名はOrnith-1.5-35B-A3B)、9B Denseの3つです。MoE(混合エキスパート)とは、内部を複数の部品に分け、入力ごとに一部だけを使う仕組みです。モデルカードによると、Ornith-1.5はQwen3.5とGemma 4を土台にして、継続事前学習・中間学習・事後学習を重ねたものです。Ornith-1.0を拡張したものだとも記載されています。
中心にある考え方について、同チームは自己足場(self-scaffolding)の枠組みに自己改善のループを足したものだと説明しています。発表ページの言い回しでは、モデル自身が「新しい課題を立て、その課題向けの足場を作り、解答の試行を生み出す」とされ、これを強化学習に回す構成だとしています。
配布はHugging Faceのコレクションにまとめられています。派生を含めて12個が並びます。素の3つ(9B / 35B-A3B / 397B)に加えて、GGUFが3つ、FP8が2つ、NVFP4が2つ、MLXが2つです。GGUFやFP8などは、動かす環境や精度に合わせた配布形式です。397Bのモデルカードのライセンス欄にはMITと書かれています。397Bはbf16で約800GBだとも記載されています。
文脈長は、モデルカードでは262,144トークンです。YaRNという手法で約100万トークンまで伸ばせるとされています。発表ページのベンチマーク欄には、測定ごとの文脈長が別に書かれています。Terminal-Bench 2.1は128K、SWE-Bench系は256K、NL2Repoは400Kです。
ベンチマークの数字を並べます。以下はOrnith-1.5-397Bの値で、比較対象は公式ページが並べているものです。Terminal-Bench 2.1(Terminus-2)は、Ornith-1.5が86.1、Claude Opus 4.8が85.0、GLM-5.2が81、DeepSeek-V4が82.7です。DeepSWEは、Ornith-1.5が56.0、Claude Opus 4.8が59.0、GLM-5.2が46.2、DeepSeek-V4が54.4です。SWE-Bench Verifiedは、Ornith-1.5が86、Claude Opus 4.8が85.8、GLM-5.2が83、DeepSeek-V4が81.6です。
このうちDeepSWEでは、Claude Opus 4.8のほうが高い数字です。56.0に対して59.0です。3つの比較表すべてでOrnith-1.5が上に立っているわけではありません。
比較対象なしで載っている値もあります。SWE-Bench Proが65.1、SWE-Bench Multilingualが79.6、Frontier-Benchが13.5、NL2Repoが59.5、GPQA Diamondが92.8、MCP-Atlasが80、Toolathlon-Verifiedが71.2、WideSearchが80.8、BrowseCompが86.6、ClawEvalが81.4です。HLEは項目はありますが数値の記載がありません。このなかでFrontier-Benchの13.5は、並んでいる数字のなかで際立って低い値です。発表ページには、この差が何によるものかの説明はありません。
小さい方の2つについても数字が出ています。35Bは、Terminal-Bench(Terminus-2)が67.8、SWE-Bench Verifiedが79です。同チームは、これがQwen3.6-35BとGemma-4-31Bを上回るとしています。9Bは、Terminal-Bench 2.1が47.0、SWE-Bench Verifiedが70.6です。加えてOrnith-1.5-9B-Mobileという量子化版があり、iPhoneとAndroidに載ると記載されています。
始め方は、Hugging Faceのコレクションから必要な形式を選んで取得する形になります。397Bを素のまま動かす場合、bf16で約800GBという記載が目安になります。手元の機材で足りない場合は、GGUFやFP8、NVFP4といった軽い形式、あるいは35Bや9Bを選ぶことになります。MLX版はApple Silicon向けの形式です。ライセンスはMITなので、商用も含めた利用の条件はモデルカードのライセンス欄を確認してください。ここに挙げた仕様はいずれも2026年8月22日時点で確認したものです。
読む人が気をつける点をいくつか挙げます。まず、発表ページには料金、APIの提供、商用サポートについての記載がありません。自分でモデルを動かす前提の公開だと読むのが自然です。次に、Ornith Teamが何者かが明かされていません。法人名、所在地、出資者、人数のいずれも記載がなく、Hugging Faceの組織ページにも説明文はありません。問い合わせ先や責任の所在を確かめたい場合、現時点では手がかりが公開されていないことになります。
ベンチマークについても限界があります。学習に使ったデータ、計算資源、学習にかかった費用は公開されていません。測定条件、つまり試行回数や足場の構成、採点方法も書かれていません。第三者による追試があるかどうかも示されていません。数字は同チームが自ら公表したものとして読む必要があります。
重みや道具をMITライセンスで公開する動きは、ほかにも例があります。DeepSeekがエージェントハーネス「dsh」をMITライセンスで公開した事例や、Alibabaが「Qwen3.8」2モデルを公開、27Bと2.4TでDL数に40倍差のように大小の規模を同時に出す型があります。またQwen累計30億DL、Hugging Faceが示すダウンロードの内訳と小型モデル偏重では、公開モデルは小型ほど使われる傾向が示されています。Ornith-1.5も9Bや35Bの受け止められ方が実際の使われ方を左右する可能性があります。コーディング用途のベンチマーク競争そのものについては、AIコーディングアシスタントは賢くなり続けているも合わせて参照できます。

