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量子コンピュータ関連銘柄 更新: 10/12 12:45(日本時間)
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Photo: Maxence Pira / Unsplash

半導体

東北大学が世界初実証——半導体集積スピントロニクスPビットとは何か

要約

東北大学とNISTの共同研究チームが、130nmのCMOS回路にスピン素子を集積したPビット回路をシリコン基板上に試作し、期待どおりの入出力特性を確認した(2026年6月発表)。確率的に計算するPビットの原理、磁気トンネル接合(MTJ)の動作、ケーブル接続だった従来の実証との違い、応用の見通しを解説します。

はじめに——確率的に計算する「Pビット」とは

AI(人工知能)の進化に伴い、計算のエネルギー効率が大きな課題となっています。従来の半導体回路は「決定論的」に動作するため、確率的なアルゴリズムを実行する際に非効率が生じます。

この課題を解決する鍵として注目されているのが、確率論的コンピュータ(Pコンピュータ) と、その基本要素であるPビット(確率ビット) です。

Pビットは、通常のビット(0か1のどちらか)とは異なり、確率的に0と1の間をゆらぐ性質を持ちます。この確率的なゆらぎを計算に利用することで、機械学習や組み合わせ最適化などの確率的アルゴリズムを効率的に実行できます。

東北大学の成果——世界初の半導体集積Pビット実証

東北大学と米国国立標準技術研究所(NIST)の共同研究チームは、日米の半導体集積プロセスを組み合わせ、シリコン基板の上にPビット回路を試作しました。半導体集積回路の上でスピントロニクスPビットを動かしたのは世界で初めてとしています(2026年6月2日発表)。130nmのCMOS回路にスピン素子を集積したもので、Pビットとして期待される入出力特性を確認しました。成果は論文誌 IEEE Electron Device Letters に掲載されています。

従来技術との違い

これまでは、単体のスピン素子と制御回路をケーブルでつないだ形で、100ビット程度の小規模な原理実証が行われてきました。今回はこれを半導体集積回路として作った点が新しく、東北大学は100万ビット程度までの大規模化が射程に入ったとしています。

製造プロセス

  • トランジスタと下層の配線は米国SkyWater Technology社で作製
  • 東北大学電気通信研究所附属ナノ・スピン実験施設にてスピン素子を形成

Pビットの動作原理——磁気トンネル接合(MTJ)

Pビットの核となるのが、磁気トンネル接合(MTJ: Magnetic Tunnel Junction) です。

MTJの構造

MTJは、絶縁層を磁性層で挟んだ構造を持ちます。

動作原理

  1. スピンの方向に依存する抵抗の違いを利用し、これをデジタル情報("0"と"1")として扱います
  2. 電気的書き込み(スピン方向の反転)も可能です
  3. 超常磁性状態では、磁化が熱ゆらぎにより確率的に反転するため、確率的な0/1の出力が得られます

この確率的な出力を利用することで、Pビットは確率論的コンピュータの基本要素として機能します。

応用分野

1. AI・機械学習向け

現行のAI・機械学習向け半導体回路が抱えるエネルギー効率の課題を克服し、省エネで高効率な計算を実現することを目的としています。

2. 組み合わせ最適化問題

中長期的な応用分野として、組み合わせ最適化問題が挙げられます。これは交通、情報通信、製造、金融、製薬といった実社会の様々な業種において多大な効果をもたらす可能性があります。東北大学は2025年12月にも、スピントロニクス素子を使った確率ビット回路で、512スピンのスピングラス問題(組み合わせ最適化の一種)をチップ上でアニーリングする動作を示しています。

何が期待されているか

確率的なアルゴリズムを従来の回路で動かすには、乱数を作る回路や計算が別に要ります。Pビットは素子そのものが熱ゆらぎで確率的に振る舞うので、その部分を物理現象に任せられる、というのが期待されている点です。ただし今回の発表は回路の試作と動作の確認までで、従来の半導体回路と比べたエネルギー効率の数値は示されていません。

今後の展望

半導体の製造工程でPビット回路を作れることを示したことで、東北大学は100万ビット程度までの大規模化が射程に入ったとしています。AI計算の省エネ化や、組み合わせ最適化問題への応用は、これからの研究開発の目標です。

まとめ

東北大学は、スピントロニクス素子を用いた「確率的Pビット」を、半導体集積回路技術と組み合わせ、シリコン基板の上で動かすことに世界で初めて成功しました。大規模なPコンピュータを半導体の製造工程で作る道筋を示した成果です。

出典:
- 世界初、半導体集積スピントロニクスPビット実証(東北大学)
- 製造容易性に優れた確率論的コンピュータを開発(東北大学工学研究科、2024年4月の別の発表)
- AI計算を高効率に処理可能な確率論的コンピューターの大規模化(東北大学AIMR、2025年12月)

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