9月25日のクオンタムビューです。今日はニュースが16本入ってきました。まず全体をざっとご紹介して、そのあと気になったものを詳しく見ていく構成でお送りします。
9月25日のクオンタムビュー。今日は16本のニュースが入ってきました。順にご紹介します。
まず資金調達の動きから4本。Azulene Labsが化学向けのAI基盤モデル構築のため340万ドルのプレシード資金を調達しました。Qambriaはフォールトトレラントな量子システム向け制御インフラの商用化に向け240万ドルのプレシード資金を獲得。Mesa Quantumはチップスケールの量子センサーとGPSに依存しない測位技術の拡大のため1,180万ドルを調達しました。QC Designはフォールトトレラント量子コンピュータの設計を自動化するAIプラットフォーム「Meridian」で、論理エラー率の中央値を従来比14.6倍削減したと発表しています。
続いて企業の提携・販売契約が2本。QuiX Quantumが日本の東北電子産業と独占販売契約を結びました。IonQはフロリダ国際大学と商用契約を結び、256キュービットのイオントラップ型量子コンピュータ「Superion」を2027年後半に設置します。
実証・技術発表が3本。Infleqtionが商用の中性原子量子コンピュータ「Sqale」上で30個のエンタングルした論理量子ビットの実証に成功しました。IonQは量子生成機械学習モデルが衛星レーダー画像の地表面変化検出で古典的手法を上回る精度を達成したと発表。東北大学とNISTの共同研究チームが、半導体集積スピントロニクスPビット回路をシリコン基板上に試作し、期待どおりの入出力特性を確認しました。
ソフトウェア・プラットフォーム関連が3本。DigiCertがポスト量子暗号への移行を支援する管理スイート「Quantum Central」の一般提供を開始しました。memQが分散量子コンパイラ「memQ DQC」をオープンソースとして公開しました。MphasisとCopa Airlinesは航空会社のスケジュール混乱時の乗客再収容問題を量子コンピュータで解く国際チャレンジの受賞者を発表しました。
そのほか、量子コンピュータの基礎解説、サーフェスコードにおける論理キュービット実装の特許取得に関する記事、LLMシステム設計の解説が1本ずつ入っています。
この中から詳しく見ていくのは、1本目がInfleqtionの30論理量子ビット達成、2本目がDigiCertのQuantum Central一般提供開始、3本目がQuiX Quantumと東北電子産業の提携です。まず1本目、Infleqtionの発表から読み上げます。
Infleqtionが、商用の中性原子量子コンピュータ「Sqale」上で、30個のエンタングルした論理量子ビットの実証に成功しました。80個の物理量子ビットに30個の論理量子ビットを符号化し、ノイズ比はベースラインの約1,000倍を達成。2026年9月24日に発表されました。Infleqtion、Sqale中性原子量子プロセッサ上で30個のエンタングルした論理量子ビットを達成 久保田さん、80個の物理量子ビットで30個の論理量子ビットを実現したわけですが、この物理対論理の比率が実用化に向けてどの程度の意味を持つのか、教えていただけますか。
そうですね。この発表で重要なのは、30個の論理量子ビットをエンタングルさせたこと自体よりも、物理8個で論理3個という低いオーバーヘッドを実現した点です。論理量子ビットとは、複数の物理量子ビットをまとめて誤りを訂正できるようにした仮想的な単位です。従来は1個の論理量子ビットに数十個の物理量子ビットが必要と言われる中、この効率の良さはフォールトトレラント量子計算の実用化を大きく近づけます。
ただ、まだ示されていないのは、この30論理量子ビットのエラー率が物理量子ビット単体より本当に低いかどうかです。エンタングルメントの成功は確認できても、誤り訂正が機能している実証まで踏み込めていません。次に論理量子ビットのエラー率が物理より低いことを示せれば、この方式の優位性は決定的になります。
久保田さんの話でいちばん分かりにくいのは「フォールトトレラント」という言葉ですね。これは「エラーを自動で見つけて訂正できる」という意味です。つまり、物理8個で論理3個という効率の良さが、エラー訂正の実用化を近づけたけれど、まだ訂正が機能している実証までは示されていない、ということですね。
2本目です。DigiCertが、ポスト量子暗号への移行を支援する管理スイート「Quantum Central」の一般提供を9月25日に開始しました。企業の87%が移行を計画している一方、本番導入は7%にとどまるという調査結果を受けて、暗号資産の統合や修復ワークフローの自動化を一つの画面で行えるようにしたものです。DigiCert、PQC移行管理のためのQuantum Central Platformの一般提供開始を発表 久保田さん、計画と実行の差がこれほど大きいのは、移行の何が具体的に難しいからなのでしょうか。
有沢さんのご指摘のとおり、計画は先行しても実行に移せないというのが実態です。実際に変わるのは、移行作業の中心が「どこに何の暗号が使われているか調べる」という調査から、「見つけた資産を順番に置き換える」という実行に切り替わる点です。これまで人手で行っていた棚卸しと優先順位付けを、一つの画面で自動化できるのは前進です。
ただ、まだ示されていないのは、このツールで移行を完了した企業の実績です。次に、導入企業が本番環境でハイブリッド証明書をどの程度の期間で展開できたかという具体的な数字が出れば、計画倒れだった7%という割合が動くかどうかの判断材料になります。
「ハイブリッド証明書」というのは、古い暗号と新しい暗号を併用した証明書のことですね。つまり、移行作業の自動化は前進したが、実際に完了した実績はまだ示されていない、ということですね。
有沢: 3本目です。9月24日、オランダのQuiX Quantumが、日本の東北電子産業と独占販売契約を締結しました。東北電子産業が日本国内でフォトニック量子ハードウェアを独占販売します。日本の目標、2030年までに利用者1,000万人・経済効果50兆円に沿った拡大です。QuiX Quantum、日本での独占販売で東北電子産業株式会社(TEI-C)と提携 久保田さん、フォトニック方式の量子コンピュータが日本市場で広がるうえで、この販売網の構築はどのような意味を持つのでしょうか。
この販売契約で、フォトニック方式という、光を使って計算する量子コンピュータの販売網が日本にできることで、これまで英語での問い合わせが必要だった企業や大学が、日本語で購入相談や技術サポートを受けられるようになります。実際に何が変わるかというと、海外ハードウェアを調達する際の言語やサポートの壁が下がる点です。ただ、まだ示されていないのは、この販売網を通じて実際にどれだけの受注が入るかです。次に国内での導入事例やベンチマーク結果が出れば、販売網が機能していると判断できます。
久保田さんの話でいちばん分かりにくいのは「販売網」という言葉ですね。これは「買いたい人が日本語で相談やサポートを受けられる仕組み」という意味です。つまり、これまで英語でのやりとりが必要だった海外ハードウェアの調達の壁が下がる、ということですね。
今日の3本は、正直、ばらばらです。Infleqtionは誤り訂正の効率、DigiCertは移行の自動化、QuiX Quantumは販売網の整備で、それぞれ前進の内容が異なります。強いて共通点を挙げるなら、いずれも「計画や理論」から「実際に動かす段階」への移行を扱っている点です。ただ、3本とも肝心なのは次です。特に見ておくべきは、Infleqtionが誤り訂正の機能を実証できるかどうかです。ここが決まれば、論理量子ビットの実用化に向けた流れが明確になります。
はい、では最後に今日の米国市場を確認します。10銘柄のうち上昇8・下落2・変わらず0、平均はプラス2.13%でした。最も上げたのはHorizon Quantumでプラス6.25%、最も下げたのはXanaduでマイナス4.32%です。
今日の3本は、いずれも「計画や理論」から「実際に動かす段階」への移行を扱っている点で共通しています。特に次に見たいのは、Infleqtionが論理量子ビットの誤り訂正が機能している実証を出せるかどうかです。ここが決まれば、論理量子ビットの実用化に向けた流れが明確になります。それでは、明日の夜もこの時間に。




