10月2日、夜のクオンタムビューです。今日は量子コンピュータ関連のニュースが10本入ってきました。まず全部をざっとご紹介して、そのあと気になったものを3本、詳しく見ていきます。どうぞ最後までお付き合いください。
まず、フェルミ国立加速器研究所 超伝導量子材料・システムセンター (SQMS)が超伝導トランスモン間の量子ビット性能ばらつきの微視的起源を特定、【寄稿】起業の「eスポーツ化」――泥臭さから、スマートに・シンプルに起業する時代へ、特許取得:量子コンピューティングの革新 – 第4部:エンタングルメント・スワッピング、ITコンサルティング大手が量子にどのように取り組むか、任意のユニタリ変換を定数深さで近似――指数個の補助量子ビットとファンアウトゲートが前提、【クオンタムマーケット】10月1日|量子関連10銘柄、8銘柄下落 平均-0.96%、Unitary Foundationが2026年量子オープンソースソフトウェア調査を開始、D-Wave、21量子ビットのデュアルレール消失エミュレーションを備えたゲートモデルシミュレータのベータプログラムを開始、NATO、運用タイムラインと標準、Classiq、ハードウェアを考慮した量子アプリケーション合成のためのFault Tolerance Engineを発表の10本です。詳しく見ていくのは、フェルミ国立加速器研究所 超伝導量子材料・システムセンター (SQMS)が超伝導トランスモン間の量子ビット性能ばらつきの微視的起源を特定、NATO、運用タイムラインと標準、ITコンサルティング大手が量子にどのように取り組むかの3本です。まず1本目、フェルミ国立加速器研究所の発表からです。
1本目は、フェルミ国立加速器研究所 超伝導量子材料・システムセンター (SQMS)が超伝導トランスモン間の量子ビット性能ばらつきの微視的起源を特定です。SQMSセンターは、Rigetti Computingなどと協力し、表面酸化物の厚さや基板の溝の深さといったナノスケールの形状が、量子ビットの性能に最大2倍の差を生むことを突き止めました。二重盲検プロトコルで22個のデバイスを評価したそうです。久保田さん、この発見は量子コンピュータの開発にとってどれほど重要なのでしょうか。
この発見は、量子ビットの性能ばらつきが「製造工程のどの部分に由来するか」を初めて具体的に示した点で大きいです。これまで同一基板上の量子ビットでも性能が違うことは知られていましたが、原因が特定できず、対策の打ちようがありませんでした。今回は表面酸化物の厚さの1ナノメートル単位の違いがT1寿命(量子ビットが情報を保持できる時間)に最大2倍の差を生むと分かりました。つまり、製造工程の管理精度を上げれば、量子ビットの性能を均一にできる可能性があります。ただ、まだ示されていないのは、この知見が実際に大規模な量子プロセッサ全体の歩留まり向上につながるかどうかです。次に、この対策を施したプロセッサで、量子ビット間の性能差が実際に縮まったという実証結果が出れば決定的です。
「T1寿命」という言葉が出てきましたね。これは量子ビットが情報を保持しておける時間のことです。つまり、表面の酸化物の厚さのわずかな違いが、量子ビットの性能に最大2倍もの差を生んでいた、だから製造工程を精密に管理すれば性能をそろえられる、ということですね。次のニュースに進みます。
2本目は、NATO、運用タイムラインと標準です。NATOは2026年7月30日に承認された量子技術ロードマップの公開サマリーを発表しました。量子コンピューティング、量子センシング、量子通信の3分野で活動線を設け、2027年までに試験や標準化の工程を具体化しています。特に、測位・航法・タイミングのための量子センシングを優先課題に挙げています。久保田さん、NATOがこうした工程表を出したことの意味をどう見ますか。
NATOがロードマップを出した意味は、量子技術を「研究テーマ」から「調達対象」に変えたことです。2027年までの工程に試験と標準化が明記されたことで、加盟国は共通の基準で量子技術を調達しやすくなります。特に注目は、量子センシングを最優先にしたことです。これは、GPSが使えない環境でも正確な位置や時刻を測る技術で、防衛現場で最も実用に近い分野です。ただ、まだ示されていないのは、このロードマップにどれだけの予算が裏付けられているかです。次に、各活動線に具体的な資金が割り当てられたことが公表されれば、この計画が本気だと確認できます。
「量子センシング」という言葉が出てきましたね。これは、量子の性質を使って、位置や時刻、磁場などを非常に高精度に測る技術のことです。つまり、NATOがこの分野を最優先にしたことで、量子技術が研究から実際の調達へと一歩進んだ、ということですね。では3本目です。
3本目は、ITコンサルティング大手が量子にどのように取り組むかです。ITコンサル大手のCGIは、量子コンピュータを自社開発せず、既存のハードウェアと顧客を結びつけるシステム統合に注力しています。D-Waveとの提携で最適化問題を解決し、米国防物流局とも研究開発契約を結びました。AIを橋渡し役に使っているそうです。久保田さん、ハードウェアを作らない企業の量子への関わり方について、どう評価しますか。
CGIの戦略は、量子コンピュータを「誰が作るか」ではなく「誰が使うか」の側面から商用化を進めるものです。自社でハードウェアを持たずに、既存のD-Waveなどのシステムを顧客の課題に合わせて組み合わせる。これは、量子技術がまだ発展途上だからこそ有効な立場です。特に、AIを使ってレガシーシステムを解析し、量子で解くべき部分を切り出すという手法は、実用的です。ただ、まだ示されていないのは、このアプローチでどれだけの収益を上げられるかです。次に、CGIが量子関連で具体的な売上高を公表すれば、システムインテグレーター型のビジネスモデルが成立する証明になります。
「レガシーシステム」という言葉が出てきましたね。これは、企業が長年使ってきた古いITシステムのことです。つまり、CGIは古いシステムの中から量子で解く価値のある問題を見つけ出し、既存の量子コンピュータと組み合わせる橋渡し役を選んだ、ということですね。
今日の3本を並べてみると、量子コンピュータの開発が「物理の研究」から「実際のものづくり」へ移っている流れが見えます。SQMSは材料のばらつきという製造上の問題に踏み込み、NATOは調達と標準化の枠組みを作り、CGIは既存の技術を顧客につなぐ橋渡し役を選んだ。それぞれの立場は違いますが、どれも「量子ビットをどうやって安定して作るか」「どうやって社会に届けるか」という実用化の問いを共有しています。次に見ておくべきは、これらの動きが実際の製品や契約として形になったとき、どの企業や組織が最初に成果を出すかです。
今日の米国市場です。10月1日の終値で、量子関連10銘柄のうち上昇は2銘柄、下落は8銘柄でした。平均はマイナス0.96%です。最も上げたのはHorizon Quantumのプラス0.40%、最も下げたのはQuantinuumのマイナス2.87%でした。
久保田さん、今日の3本から見える実用化への流れ、よく分かりました。また明日の夜、この時間にお会いしましょう。




