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量子コンピュータ関連銘柄 更新: 10/12 11:45(日本時間)
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初めての資産運用 ― 量子コンピュータから学ぶ数字の読み方

【初めての資産運用 第7回(最終回)】量子から学ぶ、効率の先でリスクを取るということ

要約

いちばん効率のよい配分(リターン6.4%)より増やしたいときの工夫を、数字で確かめます。個別の銘柄K(リターン15%・ばらつき40%)を1割加えると、効率をほぼ保ったままリターンは7.5%に。ただし2割を超えると振れ幅の大半がKから来るようになり、ほかの資産と一緒に動く前提では結論が逆になることもあります。割合の上限、下がったときの行動、定期的な見直しを決めておくことが大切です。連載の最終回です。

前回のおさらい

前回は、3つの資産H・I・Jを組み合わせ、持ち分の割合を10%刻みで66通り調べました。

  • H:平均リターン10%、ばらつき15%
  • I:平均リターン10%、ばらつき15%
  • J:平均リターン4%、ばらつき5%

3つが無関係に動く(相関が0)という前提で、効率(リターンをばらつきで割った値)がいちばん高かったのは、H 20%・I 20%・J 60%でした。効率は約1.23、全体のリターンは6.4%、ばらつきは約5.2%です。

そして最後に、大事なことに気づきました。いちばん効率のよい配分のリターンは6.4%で、HやIだけを持ったときの10%より低いのです。効率を上げることは振れ幅を抑えることであって、大きく増やすこととは別の話でした。

最終回の今回は、その先を考えます。もう少し増やしたいと思ったら、どうすればよいのか。そのとき、何を覚悟する必要があるのか。

「悪い年」の目安を1つ決めておく

リスクを増やす話をする前に、物差しを1つ足します。「悪い年には、どこまで下がりうるか」の目安です。

ここでは、全体のリターンから、ばらつきの2倍を引いた値を「悪い年の目安」と呼ぶことにします。値動きが平均を中心に釣り鐘の形に散らばると仮定すると、これより悪い年は、おおよそ40年に1度ほど来る計算になります。めったに来ないけれど、長く運用していれば一度は出会うかもしれない、という水準です。

前回のいちばん効率のよい配分(H 20%・I 20%・J 60%)なら、6.4−5.2×2で、約−4.0%です。

ただし、これはあくまで「釣り鐘の形に散らばる」と仮定したときの目安です。実際の相場では、この目安を超える下げが、仮定から計算されるより多く起きてきました。この点は後で詳しく見ます。

増やし方① 同じ材料のまま、HとIを増やす

いちばん素直な方法は、H・I・Jの3つのまま、リターンの高いHとIの割合を増やすことです。前回の表に、悪い年の目安を加えて並べてみます。

HIJ全体のリターン全体のばらつき効率悪い年の目安
20%20%60%6.4%約5.2%約1.23約−4.0%
30%30%40%7.6%約6.7%約1.14約−5.7%
40%40%20%8.8%約8.5%約1.03約−8.3%
50%50%0%10%約10.6%約0.94約−11.2%

リターンは6.4%から10%まで上がります。その代わり、効率は下がり、悪い年の目安は約−4%から約−11%まで深くなります。リターンを上げたければ、振れ幅を受け入れる。第1回からずっと見てきた関係が、ここでもそのまま表れています。

この方法の限界も見えます。材料がH・I・Jだけなら、どう組み合わせてもリターンは10%を超えません。いちばんリターンの高い材料が10%だからです。

増やし方② 個別の銘柄Kを少しだけ加える

そこで、もう1つの方法を考えます。リターンも振れ幅も大きい、個別の銘柄Kを加えることです。

  • K:平均リターン15%、ばらつき40%

ばらつき40%は、HやIの2倍以上です。1つの会社の株は、その会社の決算や事業の行方ひとつで大きく動きます。たくさんの会社をまとめて持つより、振れ幅がずっと大きくなるのが普通です。

まずは、前回の配分からJを10%だけ減らし、その分をKに回します。H 20%・I 20%・J 50%・K 10%です。計算を追いやすくするため、KもH・I・Jと無関係に動くとします(この前提は、後で見直します)。

全体のリターンは、0.2×10+0.2×10+0.5×4+0.1×15で、2+2+2+1.5=7.5%です。

全体のばらつきは、前回と同じ手順です。「持ち分の割合×ばらつき」は、Hが0.2×15=3、Iも3、Jが0.5×5=2.5、Kが0.1×40=4です。2乗すると9、9、6.25、16で、足すと40.25。平方根を取ると約6.3%になります。

効率は7.5÷6.34で約1.18、悪い年の目安は7.5−6.34×2で約−5.2%です。

ここで、増やし方①の2行目(H 30%・I 30%・J 40%)と比べてみてください。リターンは7.6%と7.5%でほぼ同じなのに、Kを10%加えた方が、ばらつきは小さく(約6.7%→約6.3%)、効率は高く(約1.14→約1.18)、悪い年の目安も浅く(約−5.7%→約−5.2%)なっています。

Kの振れ幅は大きくても、持つのが全体の1割なら、全体のばらつきへの影響は限られます。しかもKはほかの資産と無関係に動くので、振れ幅の一部が打ち消し合います。第4回・第5回で見た「分けて持つ」効果です。振れ幅の大きいものでも、少しだけなら、全体の効率をそれほど落とさずにリターンを押し上げられることがあるのです。

Kを増やしすぎると、何が起きるか

では、Kをもっと増やしたらどうでしょう。HとIは20%ずつのまま、JをKに置き換えていきます。

HIJK全体のリターン全体のばらつき効率悪い年の目安
20%20%60%0%6.4%約5.2%約1.23約−4.0%
20%20%50%10%7.5%約6.3%約1.18約−5.2%
20%20%40%20%8.6%約9.3%約0.93約−9.9%
20%20%20%40%10.8%約16.6%約0.65約−22.4%

Kを20%にすると、効率は約0.93まで下がり、HとIを半分ずつ持ったとき(約0.94)とほぼ同じになります。Kを40%にすると、リターンは10.8%で、ついに10%を超えます。しかし、ばらつきは約16.6%と、HやIを単独で持つより大きくなり、悪い年の目安は約−22%です。

なぜこうなるのでしょう。K 40%の行で、ばらつきの手順を追ってみます。「持ち分の割合×ばらつき」は、Hが3、Iが3、Jが0.2×5=1、Kが0.4×40=16です。2乗すると9、9、1、256。足した275のうち、256がKの分です。全体の振れ幅のほとんどが、たった1つの銘柄から来ていることになります。

ばらつきの計算では、持ち分を2倍にすると、その資産の項は4倍になります。少しだけ持つうちは目立たないのに、増やすと急に全体を支配し始める。これが、振れ幅の大きいものを持つときの難しさです。

「無関係に動く」は、甘い前提かもしれない

ここまで、KはH・I・Jと無関係に動くとしてきました。しかし実際には、個別の会社の株も、相場全体が下がる局面では一緒に下がることが多いものです。

そこで、KがHともIとも、ある程度一緒に動く(相関が0.5)として計算し直してみます。第5回で見たとおり、一緒に動く資産を組み合わせると、振れ幅は打ち消し合いにくくなります。

HIJK全体のリターンばらつき(無関係)ばらつき(相関0.5)効率(相関0.5)悪い年の目安(相関0.5)
20%20%50%10%7.5%約6.3%約8.0%約0.94約−8.5%
20%20%40%20%8.6%約9.3%約11.6%約0.74約−14.6%
20%20%20%40%10.8%約16.6%約19.3%約0.56約−27.7%

リターンは変わりませんが、ばらつきは大きくなります。Kを10%加えたときの効率は約1.18から約0.94に下がり、増やし方①(H 30%・I 30%・J 40%、約1.14)より悪くなりました。

前提をひとつ変えるだけで、「Kを少し加えるのは得な工夫だ」という結論が、逆になることもあるのです。前回お伝えした「前提が少し変わるだけで、いちばん効率のよい割合も変わる」ということが、ここでもはっきり表れています。

数字に表れない、個別の銘柄ならではのリスク

もう1つ、この計算では表せないリスクがあります。

Kを単独で持ったときの悪い年の目安は、15−40×2で、約−65%です。それだけでも大きな数字ですが、個別の会社の場合、話はそこで終わりません。会社が経営に行き詰まれば、株の価値がほとんどなくなることもあります。不祥事や、主力の製品の失敗で、一晩で大きく値を下げることもあります。こうした出来事は、過去の値動きから計算したばらつきには、ほとんど表れません。

そこで、計算とは別に、次のように考えておくのが現実的です。仮に、100万円を運用しているとします。

  • Kが10%なら、Kに入っているのは10万円です。Kの価値がほとんどなくなっても、失うのは全体の1割です
  • Kが40%なら、40万円です。同じことが起きれば、全体の4割を失います

個別の銘柄の割合は、「その銘柄の価値がほとんどなくなっても、受け入れられる金額」から決める。ばらつきや効率の計算とは別に、この物差しを持っておくことをおすすめします。

覚悟しておくこと

個別の銘柄を加えてリスクを増やすなら、買う前に、次のことを決めておくと、慌てずにすみます。

  1. 割合の上限を決める:全体のうち、個別の銘柄は何%までにするか。今回の計算では、1割程度なら全体への影響は限られましたが、2割を超えると、全体の振れ幅を大きく左右し始めました
  2. 下がったときの行動を決める:Kが半分になったら、どうするか。買い足すのか、そのままにするのか、手放すのか。下がってから考えると、そのときの気分で決めてしまいがちです
  3. 割合を定期的に戻す:Kが値上がりして、気づけば全体の2割を超えていた、ということも起こります。うまくいっているときほど、知らないうちにリスクが増えています。年に1回など時期を決めて、もとの割合に戻すと、リスクの大きさを保てます
  4. 前提を疑い続ける:ばらつきも相関も、過去の数字や仮定です。相場が大きく崩れる局面では、ふだんは無関係に見える資産どうしも、一緒に下がることがあります

量子コンピュータの現場では

まれにしか起きないけれど、起きると大きい出来事に備える。この考え方は、量子コンピュータの研究でも大切にされています。

量子コンピュータは、計算の途中で起きる小さな誤りを、誤り訂正という仕組みで直しながら計算を進めることを目指しています。誤り訂正は、誤りがばらばらに、ときどき起きることを前提に設計されてきました。

ところが、Googleの研究チームは、超伝導方式の量子チップで、宇宙線などが当たったと考えられるときに、チップ上の多くの量子ビットで同時に誤りが起きる現象を報告しています(2022年、科学誌Nature Physics)。めったに起きませんが、起きると、ふだんの「ばらばらに起きる」という前提が崩れてしまいます。

ふだんの平均やばらつきだけを見て安心せず、まれに起きる大きな出来事や、いっせいに同じ向きに動く場面を、別に考えておく。分野は違っても、リスクとの付き合い方には共通するところがあります。

連載を終えるにあたって

7回にわたって、資産運用の基本を、数字を手で追いながら見てきました。振り返ってみます。

  • 第1回:平均が同じでも、振れ幅が大きいと、最後に手にする金額は減る
  • 第2回:振れ幅は「ばらつき」という1つの数字で表せる
  • 第3回:リターンをばらつきで割った「効率」で、運用を比べられる
  • 第4回:分けて持つと、振れ幅の一部が打ち消し合い、効率が上がる
  • 第5回:その効果は、資産どうしの動き方(相関)で大きく変わる
  • 第6回:割合を変えて調べれば、いちばん効率のよい配分を数字で探せる
  • 第7回:いちばん効率のよい配分は、いちばん増える配分ではない。もっと増やしたければ、リスクを増やすことになる。個別の銘柄を少しだけ加えるのは1つの工夫だが、割合と前提しだいで結果は大きく変わる

計算は、効率のよい組み合わせを見つけることや、リスクを増やしたときに何が起きるかを確かめることを、手伝ってくれます。しかし、どれだけのリスクを取るかを決めるのは、計算ではありません。どのくらいの期間運用するのか、悪い年にどこまでなら耐えられるのか。それを決められるのは、運用するご本人だけです。

数字を手で動かしてみると、リターンとリスクの関係が、自分のこととして見えてきます。この連載が、ご自身の運用を数字で考えるきっかけになればうれしく思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※本記事は、特定の銘柄・商品・証券会社を推奨するものではなく、投資助言を目的としたものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。また、本記事の内容は情報提供であり、投資の成果を保証するものではありません。

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