アブダビの技術革新研究所(TII)は、アラビア語向け音声認識モデル「Falcon-ASR」を発表しました。1.6Bパラメータのモデルで、特にエミラティ方言に焦点を当てています。英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語にも対応します。TIIによると、アラビア語の6つのテストセットで平均単語誤り率(WER)20.92%を達成しました。比較に用いたリーダーボードのスナップショットにおける最高の公表結果は23.17%で、2.25ポイント低い値です。
アラビア語音声認識の課題とモデル設計
アラビア語の音声は地域、話者、状況によって大きく異なります。フォーマルなニュース放送を処理できるモデルでも、エミラティ方言の会話や電話回線越しの音声では苦戦し得ます。また、方言アラビア語は現代標準アラビア語(MSA)に比べて書き起こしリソースが少なく、訓練と評価を難しくしています。
Falcon-ASRは、エミラティ方言、MSA、他の湾岸諸国やアラビア語方言、英語で訓練されています。TIIは、日常会話で使われる言葉を、方言形や言語間の切り替えを含めて書き起こすことを目指すとしています。
アラビア語ベンチマークの結果
ELM Research Centerが管理する「Open Universal Arabic ASR Leaderboard」は、6つのテストセットのWERの等加重平均でシステムを順位付けし、文字誤り率(CER)も報告します。どちらの指標も低いほど良いです。Falcon-ASRの評価もこのプロトコルに従っています。
TIIは、リーダーボードに固定されたマニフェストを使って、同じ6つのベンチマークでFalcon-ASRを評価しました。競合他社の数値は、2026年9月30日に確認された公表済みのリーダーボード平均値です。Falcon-ASRの平均WERは、そのスナップショットにおける最高の公表結果より2.25ポイント良いです。
エミラティ方言の評価
公開評価データにはエミラティが含まれており、CasablancaにはUAEサブセットがあります。TIIはそのカバレッジを補完するため、追加のエミラティおよび湾岸方言の音声を用いた内部評価を実施しました。評価用に取り分けた録音と人間が検証した書き起こしを使用し、公開UAEサブセットを超える精度を評価しました。
TIIの内部エミラティ評価では、Falcon-ASRはWER 22.73%、CER 10.19%を達成しました。比較したシステムの中でFalcon-ASRはWERとCERが最も低く、次点のQwen3-OmniよりWERが4.07ポイント低いです。TIIによると、この結果は単語レベルと文字レベルの両方で書き起こし精度が向上したことを示します。
訓練条件と多言語対応
訓練データには、背景ノイズ、重なり合う音声、音楽、残響、電話効果、速度とピッチの変化が含まれます。エミラティの録音にも同じ処理が適用され、会議や通話などで遭遇し得る多様な条件にモデルをさらしています。
Falcon-ASRは同じモデル重みで英語も書き起こします。Hugging Face Open ASR Leaderboardが使用する7つの公開英語テストセットでは、平均WER 5.74%を達成しました。フランス語、スペイン語、ポルトガル語もサポートし、5言語すべてが同じ重みを使用します。言語フラグは不要で、出力は話された言語の書き起こしとなります。モデルはFalcon3-Audioの研究に基づいています。
どう見るか
TIIはFalcon-ASRのモデルと評価結果を発表し、Hugging Face Demo Spaceで試用できるようにしました。技術的な詳細として、アラビア語ベンチマークの平均WER 20.92%、英語の平均WER 5.74%、内部エミラティ評価でWER 22.73%という数値が示されています。
一方で、APIアクセスとネイティブアプリケーションは計画中とされており、提供時期は明記されていません。また、今回示された評価結果はTIIによるものであり、第三者が独立に実施した測定結果は資料には含まれていません。モデルの重みやコードが公開されているかどうかも資料からは不明です。




