クオンタムビュー、今回は特別版です。コーナーの開始に合わせて、8月11日ぶんを先にお届けします。この24時間に入ってきた量子関連ニュースは全部で10本です。まずは10本をざっと一覧でご紹介し、そのあと気になったものを久保田さんと詳しく見ていきます。
それでは10本、順にご紹介します。
まずハードウェア関連の研究成果から7本です。中性原子アンサンブルによる高速量子インターコネクトでは、光共振器を使わずに量子ビットと光子をつなぐ手法が示されました。量子プロセッサ上の分数量子ホール工場では、IBMの156量子ビットプロセッサで非可換エニオンを含む状態が定深度回路で準備されました。ハイブリッド超伝導量子ビット・キャビティプロセッサで動的量子回路の優位性を実証では、超伝導プラットフォーム初となるShorのアルゴリズムの動的回路実装が行われました。HefeiのスタートアップとUSTCが16量子ビットオンチップフォトニックMBQCアーキテクチャを実証では、中国のGuizhen ChipとUSTCが4光子で16量子ビットを運ぶ手法を実証しました。測定ベース量子シミュレーションによる格子ゲージ理論ダイナミクスの実現では、Quantinuum H2プロセッサで格子ゲージ理論の実時間ダイナミクスが世界初とされる形で実現されました。イオントラップ光学クディットでエンタングルメントなしのGrover探索と量子文脈依存性を実証では、単一イオンでのGrover探索と量子文脈性の破れが同一プロセッサ上で観測されました。エニオン輸送なしで非可換ブレイディングと融合を再構成では、QuantinuumのH2実機でエニオンを物理的に動かさずにブレイディングを再現する手法が実証されました。
続いて企業の動きから3本です。QuSecureのQuProtect R3 PQCプラットフォームがCarahsoftのGSA Scheduleコントラクトに追加では、ポスト量子暗号プラットフォームが米国政府の調達契約に追加されました。Quantum Computing Inc.が2026年第2四半期の財務結果を報告では、収益が前年同期比約90倍に急増したことが発表されました。Nord QuantiqueのCEO兼共同創業者であるJulien Camirand Lemyreとのポッドキャストでは、CEOが量子誤り訂正技術のオーバーヘッド削減について語りました。
以上10本です。この中から、Quantum Computing Inc.の第2四半期決算、HefeiのスタートアップとUSTCによる16量子ビットMBQC実証、QuSecureのGSA Scheduleコントラクト追加の3本を詳しく見ていきます。まずは1本目、Quantum Computing Inc.の決算からまいります。
Quantum Computing Inc.の2026年第2四半期決算が発表されました。2026年6月30日に終了した四半期の収益は555万ドルで、前四半期の369万ドルから50.4%増、前年同期の6万1000ドルからは約90倍の急増です。また7,310万ドルでNHanced Semiconductorsを買収し、Fab 2の立ち上げを前倒ししたと明らかにしました。久保田さん、この収益急増とNHanced買収、どちらから読み解くべきでしょうか。
収益の伸びだけを見るなら、前年同期が6万1000ドルという極めて小さい基準値からの90倍なので、規模の判断はまだできません。実際に変わったのは、NHanced買収でFab 2の立ち上げが前倒しされ、Fab 1のニオブ酸リチウムと合わせて垂直統合が進んだことです。ただし売上原価が収益を上回り、売上総利益率はマイナス21%と資料にあります。次に見るべきは、この利益率がいつ改善に転じるかです。
詳しく見ていく2本目です。HefeiのスタートアップとUSTCが16量子ビットオンチップフォトニックMBQCアーキテクチャを実証をご紹介します。中国のGuizhen ChipとUSTCの研究チームが、単一チップ上で4つの光子から16量子ビットを運ぶ手法を実証し、Groverの探索アルゴリズムで平均識別確率98.7%を達成しました。これは比較対象とされたUniversity of Stuttgartの4量子ビットベンチマークの80.8%を上回る数字です。発表は2026年8月のプレプリントによるもので、正式な査読はまだこれからだということです。久保田さん、この98.7%という数字、何と比べてどう評価すべきものでしょうか。
比較対象が4量子ビットと16量子ビットで規模が違う点は注意が必要です。単純な精度比較ではなく、光子1個あたりに運ぶ量子ビット数を増やして同時計数のボトルネックを避けたという設計の工夫が実際に変わった点です。ただし査読はまだこれからで、伝送損失ともつれ目撃の数値は資料の主張どおりかまだ確定していません。先ほどのQCiの決算と同じく、まず検証されるべき数字が先にある段階です。次に決定的なのは、査読を通過した上で光子損失時の情報消失をどう抑えるかが示されることだと考えます。
詳しく見ていく3本目です。QuSecureのQuProtect R3 PQCプラットフォームがCarahsoftのGSA Scheduleコントラクトに追加をご紹介します。ポスト量子暗号ソフトウェア企業QuSecureの「QuProtect R3」が、政府ITアグリゲーターCarahsoftのGSA Scheduleコントラクトに追加されました。米国の高価値連邦情報システムは、2030年12月31日までに鍵確立プロトコル、2031年12月31日までにデジタル署名アルゴリズムをアップグレードすることが義務付けられています。久保田さん、この契約追加によって、連邦機関の調達は具体的に何が変わるのでしょうか。
変わるのは調達の入り口です。GSA Scheduleに載ることで、連邦機関が個別に導入審査をやり直さずQuProtect R3を購入できるようになります。2030年と2031年の期限が決まっている以上、調達手続きの簡素化は移行の障害を一つ減らす具体的な前進です。ただしこれは契約手段の追加であって、実際にどの機関がいつ導入し、既存システムでコード変更なしに暗号アルゴリズムを交換できるという主張が実運用でどこまで成り立つかは、まだ示されていません。次に見るべきは、実際の導入事例と、その際の移行期間や運用コストが公表されるかどうかです。先ほどの2本と同じく、発表段階の前進と実証段階の確認は分けて見る必要があります。
今日の3本は、それぞれ別の段階の話です。QCiは実際の売上と買収が動いた段階、Guizhen Chipとの実証は査読前の段階、QuSecureは調達手続きが整った段階です。無理に一つの流れにまとめる必要はないと思います。ばらばらのまま並んでいるのが今日の実情です。次に見るべきは、この中で唯一検証待ちの16量子ビット実証が査読を通過するかどうかだと考えます。
査読待ちの16量子ビット実証がどう確定するか、続報を追います。クオンタムビューは今夜9時から、毎晩この時間にお届けします。

