前回のおさらい
前回は、同じ平均リターン10%でも、ばらつきが大きいと最終的に手にする金額が減ることを見ました。そして「リターンをばらつきの大きさで割る」と、ばらつき1つぶんに対してどれだけのリターンが返ってきたかが分かりました。並べた3つのうちいちばん大きかったのはD(12÷20=0.6)で、リターンがいちばん高かったE(15÷40=約0.38)は、この数字ではいちばん小さいという結果でした。今回は、その「ばらつき」の性質をもう少し掘り下げます。
同じリターン、同じばらつきの2つで試す
前回はリターンもばらつきも異なる2つの資産でしたが、今回は同じ性質の2つの資産を用意します。
- H:平均リターン10%、ばらつき15%
- I:平均リターン10%、ばらつき15%
どちらも同じなので、どちらか一方に全額を入れても、半分ずつに入れても、平均リターンは10%です。ばらつきも、2つがまったく同じ方向に動くなら、15%のまま。これでは分ける意味がありません。
ところが、この2つが「逆の方向に動く」とどうなるでしょう。Hが上がるときはIが下がり、Hが下がるときはIが上がる。すると、片方の上がりを片方が下がりで打ち消すので、全体のばらつきは小さくなります。半分ずつ持ち、しかも2つが完全に逆に動くなら、打ち消し合ってばらつきは0%になります。
⚠️ ただし、これは紙の上の話です。「毎年10%が確実に手に入る」ということになりますが、⛔ そんな組み合わせは現実にはまず存在しません。完全に逆に動き続ける2つの資産があるなら、誰かがとっくに使っています。ここでは両端を見ておくための極端な例として置いています。
相関の強さを変えてみる
「完全に一緒」と「完全に逆」の間には、さまざまな段階があります。たとえば、少し一緒に動く、まったく無関係に動く、少し逆に動く、といった具合です。この「一緒に動くのか、逆に動くのか」の強さを表す数字が相関係数です。相関係数は+1で完全に一緒、-1で完全に逆、0で無関係を意味します。
では、HとIを半分ずつ持ったときの全体のばらつきが、相関の強さによってどう変わるかを見てみましょう。
| 2つの動き方 | 相関係数 | 全体のばらつき | 効率(10÷ばらつき) |
|---|---|---|---|
| 完全に一緒 | +1 | 15% | 約0.67 |
| 少し一緒 | +0.5 | 約13% | 約0.77 |
| 無関係 | 0 | 約10.6% | 約0.94 |
| 少し逆 | -0.5 | 7.5% | 約1.33 |
| 完全に逆 | -1 | 0% | 割り算できない |
効率は、平均リターン10%を全体のばらつきで割った値です。完全に一緒のときは0.67で、⭐ 片方だけを持った場合とまったく同じです。つまり、一緒に動く2つに分けても意味がありません。少し一緒でも0.77、無関係で0.94、少し逆に動くだけで1.33まで上がります。
⚠️ 完全に逆のときは、ばらつきが0なので割り算ができません。第3回でばらつき0%のAを比べられなかったのと同じ形です。
ここで注目してほしいのは、リターンもばらつきも同じ2つなのに、相関が変わるだけで効率が大きく変わることです。逆に動くほど効率が上がるのは、全体のばらつきが小さくなるから。つまり、同じ10%のリターンを得るのに、受ける振れ幅が少なくて済むのです。
この数字が教えてくれること/教えてくれないこと
ここまで見てきた相関の効果は、すべて過去のデータから計算したものです。過去に逆に動いていた2つの資産が、未来も必ず逆に動くとは限りません。経済の状況が変われば、相関の強さも向きも変わります。また、現実の資産が完全に逆に動くことはほとんどありません。上の表の「完全に逆」はあくまで極端な例で、実際は-0.5や-0.3など中途半端な値になるのが普通です。
さらに、ここで使った計算は「2つを半分ずつ持つ」という単純な場合にだけ当てはまります。持ち分を変えたり、3つ以上に増やしたりすると、計算はもっと複雑になります。数字はあくまで参考情報であり、未来を保証するものではありません。
それでも、この「組み合わせの関係を表にする」という考え方は、投資の世界だけのものではありません。量子コンピュータの中でも、量子ビットどうしの結びつきを同じような表で表し、最適な組み合わせを探す研究が進んでいます。ただし、いま読者が量子コンピュータを使う必要はありません。あくまで「同じ形で書ける」という一致を楽しんでいただければ十分です。
次回予告
次回は、3つ以上の資産に増やしたときに、どのように全体の効率を計算するかを見ていきます。資産が増えると組み合わせの数が増えるので、表の見方を工夫します。具体的には、3つの資産をそれぞれどのくらいの割合で持つのが効率的かを、数字で確かめましょう。
※本記事は、特定の銘柄・商品・証券会社を推奨するものではなく、投資助言を目的としたものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。また、本記事の内容は情報提供であり、投資の成果を保証するものではありません。

