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量子コンピュータ関連銘柄 更新: 10/12 12:45(日本時間)
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ハードウェア

量子コンピュータが半導体に統合された後に起こると予想されること4選

要約

量子ビットを半導体の製造工程で作る研究が進んでいます。Intel の 300 mm ウェハー上のシリコンスピン量子ビット、1 ケルビンを超える温度での動作、冷凍機の中で動く制御チップ、機械学習による誤り訂正の復号といった一次情報をもとに、量子コンピュータが半導体に統合された後に起こると予想される4 つの変化(冷凍機の小型化、データセンターとの融合、極低温パッケージング、ソフトウェアの主役交代)を解説します。

量子コンピュータは、これまで「極低温の冷凍機の中に置かれた特殊な装置」という印象が強いものでした。ところが最近は、量子ビットを半導体の製造工程で作る研究が進んでいます。Intel は 2023 年 6 月、12 量子ビットのシリコンチップ「Tunnel Falls」を研究者向けに公開し、300 mm ウェハー上で、最先端のトランジスタと同じ製造技術(EUV 露光など)を使って作ったと説明しています(Intel の発表)。

量子ビットが半導体チップに入っていくと、量子コンピュータの作り方だけでなく、置き場所や使われ方も変わると筆者は考えています。かつて真空管がトランジスタに置き換わったときのように、装置の形そのものが変わる可能性があるからです。

本記事では、量子コンピュータが半導体に統合された後に起こると予想されることを 4 つ挙げ、それぞれの根拠になる一次情報を添えて説明します。

背景:量子ビットが「半導体の作り方」で作られ始めた

シリコンのスピン量子ビットは、電子 1 個のスピン(上向き・下向き)に情報を持たせます。Intel によると、1 つ 1 つの量子ビットは実質的に「電子 1 個で動くトランジスタ」であり、標準的な CMOS ロジックの製造ラインとよく似た流れで作れます(Intel の発表)。

2024 年 5 月には、300 mm ウェハーを丸ごと 1.7 ケルビンまで冷やして測る装置(クライオプローバー)で、ウェハー全体の量子ビットの性能を大量に測った結果を Nature に発表しました。ゲート忠実度(操作の正確さ)は 99.9% で、CMOS の製造工程だけで作った量子ビットとしては報告されている中で最も高い値だとしています。スピン量子ビットの大きさは約 100 ナノメートルで、超伝導などほかの方式より密に並べられることも利点に挙げています(Intel の発表、論文)。

発表時期内容
Intel「Tunnel Falls」2023 年 6 月12 量子ビットのシリコンチップ。300 mm ウェハー・EUV 露光で製造
Intel(Nature)2024 年 5 月300 mm ウェハーを 1.7 K で測定。ゲート忠実度 99.9%
Huang ほか(Nature)2024 年1 K を超える温度で動作。1 量子ビット 99.85%・2 量子ビット 98.92%
Intel「Horse Ridge II」2020 年 12 月制御回路を冷凍機の中へ。4 K で動作を確認
Google DeepMind「AlphaQubit」(Nature)2024 年誤り訂正の復号をニューラルネットワークで行う

表の数字は、Tunnel Falls の発表、Intel の Nature 論文の発表、Huang ほかの論文、Horse Ridge II の発表、AlphaQubit の論文に書かれている値です。

同じ方向の動きは欧州にもあり、当サイトではQuobly と CEA-Leti の 300 mm シリコンスピン量子ビットの取り組みを紹介しています。国内でも、10 月 6 日に半導体量子コンピュータの設計・制御をテーマにしたイベントが予定されています。半導体そのものの基礎は「半導体とは?」にまとめています。

1. 冷凍機が小さくなり、運用が軽くなる

いまの量子コンピュータの多くは、希釈冷凍機という大型の装置で、絶対零度に近いミリケルビンの温度まで冷やして動かしています。量子ビットを増やすと、その制御や読み出しで出る熱も増えますが、ミリケルビンでの冷却能力には限りがあります。

この壁に対して、シリコンのスピン量子ビットを 1 ケルビンを超える温度で、誤り耐性のある計算に必要な範囲の忠実度で動かした研究があります。論文は、1 ケルビンを超えると冷却能力が桁違いに大きくなる点を挙げ、1 量子ビットのクリフォードゲートで最大 99.85%、2 量子ビットゲートで 98.92%、読み出しと初期化で最大 99.34% の忠実度を報告しています(Huang ほか、Nature 627, 772–777(2024))。

量子ビットがより高い温度で動くようになれば、冷凍機に求められる性能が下がり、装置を小さくしやすくなります。筆者は、冷凍機がサーバーラックに収まる大きさに近づき、設置や保守の手間が減っていくと予想しています。冷凍機については、国産化の動きも出てきています。

2. データセンターの設備に入っていく

冷凍機と制御装置が小さくなれば、量子コンピュータを専用の部屋ではなく、データセンターのラックに置く道が開けます。電源、ネットワーク、監視、保守の体制といった既存の設備を使えれば、導入の費用と手間は下がります。

一方で、量子ビットを冷やす必要がなくなるわけではありません。振動や磁場の対策、冷凍機の保守など、通常のサーバーにはない条件は残ります。筆者は、量子コンピュータがまず「データセンターの中の特別なラック」として置かれ、そこから通常の計算機と同じ運用の仕組みに近づいていくと見ています。

3. 極低温で動く制御回路とパッケージングが、新しい製造分野になる

量子ビットの数が増えると、室温の制御装置から冷凍機の中へ引き込む配線の本数が問題になります。Intel は 2020 年 12 月に発表した制御チップ「Horse Ridge II」で、量子コンピュータの主要な制御機能を冷凍機の中、量子ビットのできるだけ近くに持ち込み、制御配線の複雑さを減らすとしています。このチップは 4 ケルビンで動作を確認したと説明しています(Intel の発表)。

量子ビットと制御回路を、極低温で一緒に動く部品としてどう組み合わせ、どう接続するか。この「極低温のパッケージング」は、これからの半導体製造の新しい分野になると筆者は考えています。背景で触れた 300 mm ウェハーを極低温で丸ごと測る装置のように、量子ビットを大量に作り、大量に検査する仕組みも、同じ流れの一部です。

4. ソフトウェアの主役が機械学習に移る

量子コンピュータのソフトウェアは、これまで量子回路を組み立てる道具が中心でした。量子ビットが増えると、誤りの検出と訂正、装置の調整(キャリブレーション)、運用の最適化といった仕事の量が増え、人が式で書き下すだけでは追いつかなくなります。

その一例が、Google DeepMind と Google Quantum AI の「AlphaQubit」です。再帰型で Transformer を使ったニューラルネットワークで、代表的な誤り訂正符号である表面符号の復号(どこで誤りが起きたかを推定すること)を行います。Google の量子プロセッサー Sycamore の実験データ(符号距離 3 と 5 の表面符号)で、ほかの最先端の復号法より正確に復号できたと報告しています(Nature 635, 834–840(2024))。

筆者は、量子コンピュータが半導体として大量に作られるようになると、こうした機械学習の手法がソフトウェアの中心に移ると予想しています。回路を書く道具に加えて、学習したモデルが装置を調整し、誤りを直し、データセンターの中での運用を最適化する形です。

読み方の注意

  • 本記事の 4 つは、筆者の予想です。いつ実現するかは、一次情報からは言えません
  • シリコンのスピン量子ビットは、いま公開されているチップで十数量子ビットの規模です。ほかの方式(超伝導、イオン、中性原子など)も並行して進んでおり、半導体への統合が唯一の道というわけではありません
  • 1 ケルビンを超える温度での動作は研究段階の成果です。量子ビットの数を増やしたときに同じ忠実度が保てるかは、これからの課題です

まとめ

量子ビットを半導体の製造工程で作る研究が進むと、冷凍機の小型化、データセンターとの融合、極低温パッケージングという新しい製造分野、そして機械学習を中心にしたソフトウェアという 4 つの変化が起きると予想されます。これらが重なれば、量子コンピュータは「特別な装置」から、データセンターの中で使われる計算の基盤の一つへと近づいていくと筆者は考えています。

本記事で参照した一次情報は、Intel の発表(Tunnel Falls・Nature 論文の発表・Horse Ridge II)と、Nature の論文(Huang ほか・AlphaQubit)です(2026 年 9 月 29 日確認)。

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