8月14日、クオンタムビューの時間です。この24時間に入ってきた量子技術関連のニュースは全部で15本。まずは全体をざっと紹介し、そのあと気になったものを久保田さんと詳しく見ていきます。
それでは今日の15本を順番にご紹介します。
まずQuantinuum関連の動きが2本です。EPFLがQuantinuumのイオントラップクラウドアクセスをSCITAS HPCプラットフォームに統合、スイスの学術機関がQuantinuumの量子コンピュータへのクラウドアクセスを自前のスーパーコンピュータ基盤に統合しました。Quanta ComputerとQuantinuumが耐障害性を持つイオントラップ型ハードウェア製造の産業化でパートナーシップを締結、量子コンピュータの量産体制構築に向けて共同開発契約を結びました。
続いて量子誤り訂正関連の研究を2本です。軽量3D CNNで量子誤り訂正を高速化:構造を意識した「QuantiSpect」プリデコーダ、清華大学の研究チームが軽量なプリデコーダを提案しパラメータ数を大幅に削減しました。保護された超伝導量子ビットのための保護された測定手法、保護された超伝導量子ビットを壊さずに測定する手法が提案されました。
コンパイル手法の研究です。Harvest: マジックステートプロトコルに対応したリソース考慮型量子コンパイル、耐障害性量子計算向けの新しいコンパイル手法で大幅な高速化を達成しました。
量子ネットワーク関連を2本です。DARPAがQunnectに量子ネットワークのリアルタイム偏波補償を進展させる契約を授与、米国防高等研究計画局がQunnectに研究契約を授与しました。ダイヤモンド中スズ空孔中心とフォトニック集積回路によるフルスタック大規模量子ネットワーク基盤、ダイヤモンド中の発光中心とフォトニック集積回路を組み合わせた量子ネットワーク基盤が実証されました。
光子を使った研究です。高次元符号化した単一光子によるチップ上での多量子ビットグラフ状態生成、単一光子を高次元に符号化してチップ上で多量子ビット状態を生成しました。
中性原子関連の研究とビジネスです。1024個の中性原子量子ビットからなる欠陥のない量子レジスタの高効率生成、光ピンセットを使い最大1024量子ビットの欠陥のない量子レジスタを高速に構成しました。Infleqtion、2026年第2四半期決算を発表:売上高は前年同期比116%増で過去最高を記録、ガイダンスを4,300万ドルに引き上げ、CHIPS Actによる1億ドルのLOIを獲得、中性原子量子コンピュータ企業のInfleqtionが過去最高の売上高を記録しました。
インフラ・拠点整備の動きです。T-SQUAREDがOxfordのInfleqtionのQuantum Innovation Centreの建設を開始、Infleqtion向けの新しい研究拠点の建設が始まりました。SDTがカナダの非営利組織Open Quantum Designに公式製造パートナーとして参加、韓国の企業がオープンソースのイオントラップ型量子コンピュータの製造パートナーに加わりました。
Xanadu関連の提携を2本です。University of GuelphとXanaduが量子教育と人材育成の推進に関するMOUを締結、量子人材育成に関する覚書を大学と締結しました。XanaduとUniversity of Albertaが提携し、光線力学的がん治療薬の発見を加速、がん治療薬の設計に向けた量子アルゴリズム開発で提携しました。
最後にポスト量子暗号関連です。BTQ TechnologiesがITCENGLOBAL子会社ITCEN PNSと覚書を締結し、韓国でポスト量子セキュリティを展開、韓国でポスト量子暗号技術を展開する覚書を締結しました。
以上15本です。この中から今日は、Quanta ComputerとQuantinuumのパートナーシップ、Infleqtionの決算、1024量子ビットの中性原子レジスタの3本を詳しく見ていきます。まずは1本目、Quanta ComputerとQuantinuumのパートナーシップからです。
Quanta ComputerとQuantinuumが耐障害性を持つイオントラップ型ハードウェア製造の産業化でパートナーシップを締結についてです。イオントラップ型量子コンピュータのQuantinuumと、エレクトロニクスメーカーのQuanta Computerが、量子コンピュータの量産体制構築に向けた共同開発契約を締結しました。これは98量子ビットのHeliosプロセッサをOracle Cloud Infrastructureに展開する提携に続くものです。久保田さん、今回の提携で具体的に何を「量産」しようとしているのか、教えていただけますか。
今回変わるのは、量子コンピュータの作り方そのものです。これまでは研究室で職人的に組み立てていたイオントラップ装置を、Quantaのノウハウでラックマウント筐体や自動製造ラインに乗せる、いわば量産工場の設計図作りが始まったということです。まだ示されていないのは、実際に量産ラインが稼働して何台作れたか、コストがどこまで下がったかという数字です。Heliosの次の世代機がこの体制で作られて出てくれば、量産化が実を結んだ最初の証拠になります。
今の「ラックマウント筐体」というのは、装置をサーバーのように規格化された箱に収めて設置しやすくする、という意味ですね。つまり、量産できる形に設計を作り直す段階に入った、ということですね。
Infleqtion、2026年第2四半期決算を発表についてです。中性原子量子コンピュータ企業のInfleqtionが、2026年6月30日締めの第2四半期決算を発表しました。売上高は前年同期比116%増の1,263万ドルで四半期として過去最高、通期見通しは4,300万ドルに引き上げ、CHIPS Actからは最大1億ドルの資金提供の意向書を獲得しました。久保田さん、今回の売上高の伸びは何によって支えられているのでしょうか。
今回の伸びは一つの製品ではなく、複数の実需が重なった結果です。NASAの重力勾配測定、Eatonとのグリッド向け契約、原子時計Tiqkerの商業化がそろって寄与しています。加えてCHIPS Actの最大1億ドルという意向書は、あくまで提案段階の話で、実際に資金が入るかはこれからです。まだ示されていないのは、この売上増が一過性の政府・実証案件によるものか、繰り返し発生する商業契約によるものかという内訳です。先ほどのQuantinuumが量産体制という供給側を固めているのに対し、Infleqtionは需要側の広がりを見せている点で対照的です。
今の「意向書」というのは、正式な契約ではなく「この条件で支援したい」という約束の手紙のようなものですね。つまり、今回の増収は複数の実需が重なった結果で、CHIPS Actの資金はまだ確定していない、ということですね。
1024個の中性原子量子ビットからなる欠陥のない量子レジスタの高効率生成についてです。光ピンセットで捕らえた中性原子を使い、3500を超えるサイトを持つアレイの中から、最大1024個の量子ビットからなる欠陥のない2次元の量子レジスタを高速に構成しました。最大50本の輸送用ピンセットを並列に動かし、32×32サイトの目標配置をほぼ完全に埋めた状態で維持したということです。久保田さん、この「1024個」という規模は、これまでの中性原子方式と比べてどのくらい前進したものなのでしょうか。
1024個という数字自体より、そこに至る作り方が変わった点が重要です。強度をそろえる部分と配置を作る部分を別の光学系に分けたことで、3500以上のサイトから欠陥のない1024量子ビットの配列を高速に組めるようになりました。まだ示されていないのは、この配列を使って実際に計算やゲート操作をどれだけ正確にこなせるかです。配列を作れることと、そこで量子ビットとして安定に動かせることは別の話です。先ほどのInfleqtionも中性原子方式ですが、あちらは商業化、こちらは基礎規模の拡大という段階の違いがあります。
今の「配列を作れることと、量子ビットとして安定に動かせることは別」というのは、原子をきれいに並べる技術と、並べた原子を計算に使える精度で扱う技術は、別の課題だということですね。つまり、今回の成果は配列の規模と速さを高めた段階であって、計算精度の確認はこれからだ、ということですね。
3本を並べても、無理に一本の線にはまとまりません。QuantinuumとQuantaは供給網の話、Infleqtionは需要と資金の話、中性原子の1024量子ビットは規模拡大の話で、それぞれ別の段階を進んでいます。ばらばらに進んでいるのが今の業界の実情だと思います。次に見ておくべきは、Quantinuumの量産体制から実際に次世代機が出てくるかどうかです。
3つの前進がそれぞれ別の段階で並走している、という今日の整理でした。明日の夜もこの時間に、クオンタムビューでお会いします。




