10月17日、夜のクオンタムビューです。今日は量子コンピュータ関連のニュースが全部で19本入ってきました。まず全体をざっとご紹介して、そのあと気になった3本を詳しく見ていきますね。どうぞ最後までお付き合いください。
まず今日の19本をまとめてご紹介します。量子コンピュータの実機を使った研究から、パッチワーク:リアルタイム復号のための自動化レイアウト手術と時空間分割、Harvard、Anthropic、QuEraはLLMを使用して、最大9,100倍低いリソースコストで量子回路を発見、MIT物理学者、第一原理AIで強いランダウ準位混合における非可換エニオン秩序を解明の3本。ハードウェアの実証では、D-Wave、728量子ビットを用いた高次トポロジカル絶縁体の3次元アナログ・デジタル量子シミュレーションを実証、オックスフォード大学、多種原子ネットワークのもつれを実証し、メモリ保存を10秒以上に延長、Chalmers Next Labs、ConScience、NQFFが国際テストベッドにわたる超伝導量子ビットチップの安定性を検証。ソフトウェアと提携では、Open Quantum、IonQ、Rigetti、IQM、AQTハードウェア向け高水準QPU実行のためのネイティブQrisp統合を発表、Kipu QuantumとNTT DATA、エンタープライズ量子コンピューティングおよびQMLアプリケーションの拡大で提携、Kipu Quantum、QuEraハードウェア上で分子毒性分類のための中性原子量子特徴抽出を実証。施設と人材では、MIT Bengaluru、Q-HUB@MAHEを開設し、QuantrolOxのオープンアーキテクチャVIDYAQAR量子システムを配備。政策では、QuIC、量子技術に関するEUデュアルユース管理の調和を求めるポジションペーパーを発表。AIと量子の交差点では、Claude×量子コンピュータの動きまとめ——回路の設計、レーザーの制御、SDKとの接続、ベンチマーク。周辺技術では、NISTとJQIなど、2台のレーザーで作るチップ型光周波数コムを実証——携帯型の光原子時計への応用を想定、NVIDIAとAI4Bharat、インド22言語の事前学習コーパス約2.8兆トークンを発表——オープンな生成パイプラインも、NVision Quantum Technologies、フォトニック集積アーキテクチャにより分子量子コンピューティングへ拡大。市場と業界の動きでは、【クオンタムマーケット】10月16日|量子関連10銘柄すべて下落、平均-7.48%、メルセデス・ベンツとNVIDIA、自動運転で戦略的提携を拡大——次世代システムを共同開発、NVIDIA、オープンなエージェント向けモデル「Nemotron 3.5 Super VL」などを発表——精度と速度を両立、NVIDIA「RTX Spark」搭載ノートPCが10月16日に世界で発売、6社から——価格は2,599ドルから。この中から、D-Waveの3次元シミュレーション実証、オックスフォード大学のもつれ保存、Kipu QuantumとNTT DATAの提携の3本を詳しく見ていきます。
1本目です。D-Wave、728量子ビットを用いた高次トポロジカル絶縁体の3次元アナログ・デジタル量子シミュレーションを実証。D-Wave社が、最大728量子ビットを使ったAdvantage2プロセッサ上で、1次元から3次元までの高次トポロジカル絶縁体を実証しました。トポロジカル絶縁体とは、内部は絶縁体なのに表面だけ電気を通す特殊な物質です。3次元のバルクトポロジカル不変量を初めて実験で抽出したとのことです。久保田さん、この実証で量子コンピュータの何が前に進んだのでしょうか。
この発表で変わるのは、量子アニーリングマシンの使い方です。従来は最適化問題を解くための専用機という見方が強かったですが、今回はアナログ・デジタルという新しい制御方式で、物質の性質を調べるシミュレータとして使えることを示しました。しかも728量子ビットという実用的な規模で、3次元のトポロジカル不変量を測定できたのは初めてです。まだ示されていないのは、この手法で相互作用のある量子多体系、つまりもっと複雑な物質を扱えるかどうかです。次に、相互作用する模型で同じように測定ができれば、量子シミュレータとしての決定的なデモンストレーションになるでしょう。
「トポロジカル不変量」という言葉が分かりにくかったかもしれません。これは物質の表面の性質を特徴づける整数値で、形を連続的に変えても変わらない量のことです。つまり、この実証でD-Waveのマシンが、物質の性質を調べるための汎用的な測定器としても使えることを示した、ということですね。
2本目です。オックスフォード大学、多種原子ネットワークのもつれを実証し、メモリ保存を10秒以上に延長。オックスフォード大学が、ストロンチウムとカルシウムの2種類の原子を使い、離れたイオントラップ間で最大4量子ビットのもつれ状態を生成しました。もつれ状態とは、離れた粒子同士が瞬時に影響し合う量子力学特有の関係です。カルシウムのメモリ量子ビットに10秒以上保存できたとのことです。久保田さん、なぜ2種類の原子を使うことが重要なのですか。
量子ネットワークでは、光を通じて遠くの量子ビット同士をもつれさせますが、その光を出す原子はどうしてもノイズの影響を受けやすいんです。オックスフォードのチームは、光を出す役割のストロンチウムと、情報を保存する役割のカルシウムを分けました。カルシウムは磁場の影響を受けにくいので、もつれを10秒以上保てます。これは生成時間の100倍以上です。まだ示されていないのは、この保存時間がもっと長い距離や、より多くのノードをつないだときに保てるかどうかです。次に、3つ以上の拠点をまたいだネットワークで同じ性能が出れば、分散量子コンピュータの実現に大きく近づきます。
「イオントラップ」という言葉が出てきましたね。これは電場を使って原子を空中に浮かせておく装置のことです。つまり、光を出す原子と情報をしまう原子を分業させることで、もつれ状態を長持ちさせることに成功した、ということですね。
3本目です。Kipu QuantumとNTT DATA、エンタープライズ量子コンピューティングおよびQMLアプリケーションの拡大で提携。量子ソフトウェア開発のKipu Quantumと、ITコンサルティングのNTT DATAが戦略的パートナーシップを結びました。NTT DATAの約20万人の従業員にQPUアクセスとトレーニングを提供し、鉱山機械の予知保全などへの応用を進めるとのことです。久保田さん、この提携の意味するところは何でしょうか。
この提携で変わるのは、量子コンピュータを使う人材の裾野が広がることです。NTT DATAの約20万人という規模のコンサルタント集団が量子に触れる機会を得るのは、業界にとって大きいです。Kipu Quantumはハードウェアに特化したアルゴリズムを持っていますが、それが実際の産業課題に適用されるためには、現場の課題を理解した人材と組む必要があります。まだ示されていないのは、鉱山機械の予知保全のパイロットで、どの程度の精度向上やコスト削減が達成できるかです。次に、このパイロットの具体的な成果指標が公開されれば、他の産業分野への展開も説得力を持つでしょう。
「予知保全」という言葉を補足しますね。これは機械が壊れる前に、データから故障の兆候を予測して先回りして修理する方法のことです。つまり、この提携で量子コンピュータの技術が、実際の産業現場で使われるための人材と応用先がそろった、ということですね。
今日の3本を並べて見ると、量子コンピュータが「実験室の中の研究」から「実用的なツール」へ移りつつある流れが見えます。D-Waveは物質の性質を調べる測定器として、オックスフォードは量子ネットワークの部品として、KipuとNTT DATAは産業応用の足がかりとして。ただし、この3つはまだ別々の方向を向いていて、1つの流れにまとまったとは言えません。それぞれが次のステップとして、実用規模での検証を待っている段階です。次に見ておくべきは、これらの技術が実際の顧客や研究機関で使われたときの具体的な成果指標が出るかどうかでしょう。
今日の米国市場では、量子コンピュータ関連10銘柄がすべて下落しました。平均は-7.48%で、いちばん下げたのはArqitで-11.82%、いちばん下げ幅が小さかったのはQuantinuumで-0.35%でした。
今日は3本のニュースを軸に、量子コンピュータが研究から実用へ向かう途中にあるという久保田さんの視点をお届けしました。明日の夜もこの時間に、また新しい動きをお伝えします。おやすみなさい。




